女性が男性を介護することは肉体的精神的に厳しい
今回の私たちの調査では、「介護の現場で働く専門職」がプロとして異性の介護にどう向き合っているかも聞きました。以下はその具体例です。
●デイサービス、介護施設員(女性・常勤)「基本的には同姓の介護をしています。男性入所者の女性介護者へのハラスメントはしばしば問題になります。認知症になると性的な欲望の抑制がきかず、胸を触ったりすることがありました」
●ホームヘルパー(女性・非常勤)「入所者の男性は体重が重いので、女性では入浴介助は難しいです。体の自由が利かなくなった要介護者を入浴させることが介護者の一番の肉体的負担。今は入浴介護をするヘルパーの人数も少ない」
●ケアマネージャー(女性・非常勤)「娘や嫁が、父(義父)の介護をすることがありますが、父親は思い通りにならないと娘に手を上げることがあります。男性は力が強いから大変な事態になることがあります」
「現在介護中&介護経験者」の50~60代を中心とした女性に加え、「介護・ヘルパー職に就いているプロ」からの報告をみると、親族の間で異性をみることは想像以上に難しく、特に女性が男性を介護することは肉体的にも精神的にも厳しいことがよくわかりました。
妻が夫の介護をする際に「同居する子供に頼らない理由」
一方、50~60代を中心とした女性が、配偶者(夫)の介護をする際はどのようにしているのでしょうか。
今回のアンケートでは配偶者を介護したことのある女性は105人中7人でした。そして、その全員(100%)が夫の介護を「自分ひとりで行った」と答えました。なお7人中2人(28.6%)は「未婚の子供と同居」でした。
なぜ、同居する子供に頼らないのでしょうか。
聞き取り調査では、「子供に迷惑をかけたくない」という言葉をたくさん聞きました。彼らは、「子供に迷惑をかけたくない。だから……」と続けて、配偶者(夫)の介護は自分ひとりでするし、自分の将来(介護)もできれば子供に迷惑をかけたくないと言います。私が「子供に迷惑をかけたくない、とはどういう意味ですか?」と聞くと、このような回答がありました。
●Kさん、52歳「子供は自分で働いて、社会生活を営んでいる。親に介護が必要になったらといって、子供に介護離職をさせたくない」
●Hさん、64歳「子供はまだ20代。そんなに若いのに親を介護するなんてかわいそう。やりたいことをやってからでないと。だから、私が(夫の介護など)やれることは全部やります」