「実父や義父は施設にお任せしたい。オムツをかえるのが嫌」
実母・実父を介護する場合、下記の数値のように、やはり「きょうだいと協力」してというケースが最も多かったのですが、次に「自分ひとり」、さらに、「外部の施設・ヘルパー」という順番になりました。
▼実母の介護経験者(62人)
きょうだい(22人/35.5%)
ひとり(18人/29%)
外部の施設・ヘルパー(15人/24.2%)
配偶者(2人/3.2%)
子供(1人/1.6%)
他(4人/6.5%)
▼実父の介護経験者(16人)
きょうだい(5人/31.3%)
ひとり(4人/25%)
外部の施設・ヘルパー(2人/12.5%)
配偶者(1人/6.3%)
他(4人/25%)
「外部の施設・ヘルパー」より、「きょうだいと協力」や「自分ひとり」というケースが多いのは、なぜでしょうか。それは「後悔したくない」という気持ちが強いからではないでしょうか。介護は大変とわかっていても、他人任せにできず、自分もしくは血のつながったきょうだい間で親を看取ろうと覚悟を決めているということでしょう。また、「周囲の目が気になるから、親を見捨てられない」といった意識もありそうです。
娘が実親を介護する際、「外部の施設・ヘルパー」の力を借りる人の割合は「実母」の場合で約24.2%、「実父」の場合で約12.5%と、実母を介護するケースのほうが多い結果となっています。しかし、このアンケートとは別に介護体験者12人に聞き取り調査した際、こんな意見が出ました。
「父も娘に対してプライドがあるのでしょうね」
●Kさん、59歳(女性):実母を介護「母は自分が看るけど、実父や義父は施設にお任せしたい。オムツをかえるのが嫌です。父も嫌だろうし、私も嫌。だから、父にそうなったら施設に入ろうね、と話している」
●Sさん、62歳(女性):実父を介護「結果的に、実父は施設だった。私が父のオムツをかえようとしたら父は嫌がった。父も娘に対してプライドがあるのでしょうね。そういう意味で私は父の介護はしていない」
娘が実父を看る場合のほうが、潜在的な「介護の壁」が高くて厚いのかもしれません。娘はやはり「異性である父親のシモの世話」に抵抗感があり、父も「父親としての役割や威厳を保ちたい」というプライドがあります。つまり、生物学的な性差(セックス)だけでなく、社会的・文化的な性差(ジェンダー)も、娘が異性である父を看る際の「壁」につながるのではないかと考えられます。