細かな事実を聞く野党の「クイズ的質問」は最悪

それともう一つは、国会での議論のやり方改革だよ。あんな会議を民間でやる奴がいたら、そいつは即時研修送りだね。論点整理が全くなっていない。

国会の議論は、基本的に野党が政府に質問して、政府が答えるというパターン。だから政府を支える官僚たちは、きちんとした答えができるように事前に準備するんだけど、それがやり過ぎなんだよね。

野党の質問が、単純な事実確認や数字確認のことなら、委員会日の前に官僚に確認すればいいだけだし、どうしても委員会当日に聞きたいというなら、官僚が準備するためにも、事前に質問内容を官僚側にきちんと知らせる必要がある。これを事前通告というが、現在この事前通告がうまく機能せず、官僚は夜を徹して、どんな質問が来ても対応できるように、膨大な量の答えを用意している。これを想定問答の準備といい、質問を予測して膨大な準備をするんだけど、当日、予測した質問が出ないことがほとんどで、大量に準備した答えがほとんど無駄となることも多い。

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このように官僚の事前準備の無駄な労力を省いて、そこで生み出された時間を、データ集計ミスを防ぐために使ってもらうというのが国会改革の柱だ。野党はデータ集計ミスを批判するだけではいけない。データ集計ミスを防ぐための霞が関の働き方改革には、野党も責任を負っていることを自覚すべきだ。

だから細かな事実や数字をその場で聞く、クイズみたいな野党の質問には、その場でタブレットPCで調べて答えるという国会慣習・ルールにしたらいい。あんな質問は首相や政府側が答えに詰まる場面を見せることだけが目的の最悪な質問だ。

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僕は政策論争というなら、政府も野党に質問できる「反問権」を持つべきだと思う。よく似た言葉だが、反論権は反問権とは異なるものだ。反論権は言われたことに反論するだけ。反問権は、言われていないことであっても、全く新規に独立に質問ができるというものだ。政府はこの反問権を駆使すれば、政府案を批判してくる野党に対して、野党の案、考え、論理の組み立て方について追及し、野党のそれを浮かび上がらせることができる。

そして与党と野党が、お互いの案、考え、論理の組み立て方をぶつけ合うというのが政策論争というものだ。現在は、野党は政府に質問・追及だけをすればよく、じゃあそれだけ文句を言うならあなたたち野党はどう考えているの? どうすればいいの? というところには答えなくてもいいようになっている。だから野党は無責任な批判ばかりできる。

僕が知事、市長のときも、僕に反問権を与えて欲しい! と議会に言ったけど、議会は最後まで認めてくれなかった。だから野党議員は、散々僕に対して批判や悪口めいたものを言って、僕がそれに、「だったらあなたはどうすべきと考えているのですか?」と問おうとしたら、野党議員は知事(市長)の返事は要りません、と言って僕の反問を遮り、その場を終えてしまうんだ。野党議員の言いっ放しで終わってしまう。僕が「しゃべらせて欲しい!」と議長や委員長に許可を求めても、議長や委員長は「質問議員が知事(市長)発言は不要と言っているので、これで終えます」と終了してしまう。

日本はほんと成熟した民主国家だよ。知事、市長であっても議場や委員会室においては、議長、委員長の許可がないと何も発言ができない。しかも、大阪維新の会の議長、委員長であっても、僕に発言をさせないんだ(笑)

もし政府が反問権を持っているなら、「データ集計ミスは申し訳ないが、そのことによって今般の出入国管理法改正の正当化根拠がどのように崩れたのか、野党の皆さんの考えがどう影響を受けたのか、野党の皆さんによる政府のチェックがどの程度影響を受けたのか、教えて頂けますか」と問えばいい。野党は、今回の技能実習生の聞き取り集計ミス程度のことでは、何かに影響したことなんて論証できないよ。影響を論証できなければ、それは許されるミスと言えるのに、政府に反問権がないことをいいことに、今の野党はミスがあったことだけで与党を追及し続けている。ほんと国民のためにならない国会だね。

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(ここまでリード文を除き約3100字、メールマガジン全文は約1万2000字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.128(11月20日配信)を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【国会改革論(1)】野党はささいな統計ミスではなく、政府の「考え方、論理の組み立て方」を批判せよ》特集です。

(写真=iStock.com)
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