航空会社は自らに厳しくあれ

副操縦士の今回の飲酒行為は、信頼を大きく裏切るものだ。国土交通省が罰則も視野に入れて具体的なアルコールの数値基準などを定めるというのも無理はない。外国では呼気や血液中に占めるアルコール濃度の基準値を定めている。今後、航空法に基づいた基準が定められることになるだろう。

ただ法律を守るのは、パイロットら乗務員だ。航空各社がその高い職業倫理で自らを厳しく律していかなければならないことに変わりはない。

読売社説も「重大事故の芽を摘むために、国土交通省が基準の強化を検討するのはうなずける。航空各社には、乗員教育の徹底が求められる」と主張している。

パイロットが乗客を道連れに自殺する事故は珍しくない

世界ではパイロットが乗客・乗員を道連れに機体を故意に墜落させて自殺する事故も起きている。

最近では2015年3月24日に起きたドイツの格安航空会社の旅客機(A320)の墜落事故だ。27歳の副操縦士が、乗客乗員計149人を乗せたまま機体をフランスアルプスの山肌に激突させた。自殺の疑いが濃厚の事故だった。

乗務中のパイロットの自殺はこれ以外にもある。

シンガポール航空の子会社シルクエアの旅客機(B737)が、1997年12月にスマトラ島に墜落して乗客乗員104人全員が死亡した事故も、インドネシア政府の調査の結果、機長が自殺を図った可能性が強い。

「副操縦士は深刻なうつ症状だった」と発表

1999年10月、アメリカの東部海岸沖に墜落して乗員乗客217人全員が死亡したエジプト航空機(B767)の墜落では、米国家運輸安全委員会(NTSB)が「副操縦士が意図的に墜落させた」との最終報告書を公表している。ボイスレコーダーには「神にすべてを委ねる」と語る副操縦士の声が録音されていた。

2014年3月にマレーシア・クアラルンプール発北京行きのマレーシア航空機(B777)が南シナ海上で消息を絶った事故も、管制への連絡がないなど謎が多く、海に機体を墜落させて自殺したとの説が有力だ。

最初に挙げたドイツの格安航空会社の事故では、親会社のルフトハンザが「副操縦士は深刻なうつ症状だった」と発表している。