バスの運転手が指摘しなければ、そのまま乗務していた

前述したが、読売社説もその社説の中盤で「事前の自社検査で、酒気帯びが見過ごされたことも問題だ」と書く。

「副操縦士は、一緒に乗務予定の機長2人と、空港内の事務所で呼気検査を受けていた。感知器に息を吹きかける旧式の機器だった。日航は、副操縦士が『不正をした可能性がある』と見ている」

日航はロンドン警察の捜査が一段落した時点で、副操縦士に不正があったかどうかを確認すべきである。不正を具体的に明らかにすることによって今後、不正を未然に防ぐことができるからだ。こうした努力の積み重ねが、空の安全につながる。

「機長らは、副操縦士の酒の臭いや異変に気付かなかったという。事実だとすれば、緊張感の欠如が甚だしい。空港内バスの運転手が指摘しなければ、そのまま乗務していた可能性が高い」

2人の機長が本当に気付かなかったというなら読売社説が指摘するように「緊張感の欠如が甚だしい」だろう。

しかし、離れた運転席に座ったバスの運転手が気付く、基準を10倍以上も超えたアルコールの濃度である。機長らはお酒の臭いがしても「トラブルに巻き込まれたくない」と知らん顔をしていたのかもしれない。もしそうだとすれば、2人も同罪である。

航空法に具体的なアルコール基準値は定められていない

さらに読売社説はこう指摘する。

「副操縦士は『少しだるいと感じていた』と釈明したという。航空法や日航の社内規定は、乗務に支障を及ぼす飲酒を禁じている」
「航空法には、呼気検査でのアルコールの具体的な基準値は定められておらず、検査も義務付けられていない。パイロットの高い職業倫理を信頼してのことだろう」

事実、航空法は「飲酒の影響下で運航してはならない」と規定はしているものの、関連規則を含めて具体的な基準値は定めていない。各航空会社の社内規定に任せている。それは飲酒操縦などだれが考えても許されない行為だからであり、さらには読売社説が指摘するように乗務員の職業倫理を信頼しているからだ。