明日の会議のために夜通し頭をひねる人は、なぜダメなのか?

明日の会議では新しい企画案を提出しなければならず、徹夜を覚悟。しかし、自信を持ってプレゼンしたアイデアは皆から不評で、上司からダメ出しを食らう。

そんなビジネスパーソンに池谷教授が薦めるのが「怠惰思考」であり、物事を考える途中で「休止期間」を置く。考えを熟成させるための期間といってもいい。それには睡眠が適しているそうだ。

この点において小川准教授も同意見で、「思い切って寝たほうがいいですね」という。実は哲学者も古代ギリシャ時代から「睡眠」を重視し、アリストテレスが次のような言葉を残している。

「醒めているものはすべて眠りうることが必然である。というのは絶え間なく活動することは不可能だからである」

「アリストテレスのいう睡眠とは、感覚が動かないでいる状態のこと。とくに『共通感覚の停止』、つまり意識自体を休ませます。意識には再生産が必要だからで、意識をいったんリセットします。それによってスッキリした頭で考え直すことができて、いいアイデアに結びつくわけです」(小川准教授)

そうした「無意識下でのリセット」の仕組みを、脳科学が解き明かしてくれている。

人は睡眠中、浅い眠り(レム睡眠)と深い眠り(ノンレム睡眠)を繰り返しており、その間も脳は活動し続けている。「海馬では浅い眠りのときには『シータ波』という脳波を出して情報の脳内再生を行う一方、深い眠りのときには、『鋭波』と呼ばれる脳波が出て記憶として保存する作業をしています。つまり、人は寝ている間、記憶の整理と定着を交互に行っているのです」と池谷教授はいう。

起床後には「レミニセンス効果」と呼ばれる現象が起きる。これは記憶した直後よりも、一定時間が経ってからのほうがよく記憶を想起できる現象のこと。「『追憶現象』ともいいますが、朝起きたときにいいアイデアが浮かんだりするのは、この追憶現象によるものです」と池谷教授はいう。

よく多忙で睡眠不足を自慢する人がいるが、いかがなものか。