ライバルを見返そうとがむしゃらに頑張る人は、なぜダメなのか?

ライバルの同期が自分より先に出世した、後輩に追い抜かれた……。「どうして俺じゃないんだ!」と怒り狂う、あなた。不幸や不運な出来事は誰にでも起こる。そんなあなたに、小川准教授は「三大幸福論」の1人、哲学者アランの言葉を紹介する。

「怒りと絶望はまず第一に克服しなければならない敵である。それには信じなければいけない。希望を持たねばならない。そして微笑まねばならない」

アランは楽観主義者といわれるが、アラン自身が「不撓不屈のオプティミズム」と表現するほど徹底したもので、「簡単にいうと決してくじけない楽観主義です」と小川准教授。前向きに希望を持ち、笑顔でいることが重要なのだ。小川准教授自身、総合商社マンからフリーター生活に転落した際に、アランの言葉に救われたという。

「当時の私はエリート意識が強くて、現実を受け入れられず、新たな一歩が踏み出せなかった。楽観的になるとは、怒りや絶望から生まれた緊張状態の“結び目”を解くことにほかならず、その方法の1つが微笑むことなのです」

また、アランは「うまくいったからうれしいのではなく、自分がうれしいからうまくいったのだ」とも述べている。小川准教授は「これは“心と体は一体”というアランの考えを象徴する言葉です。私たちはうれしいから笑顔になると思っていますが、逆に笑顔になることでうれしくなることも成り立つのです」と解説する。

一方、池谷教授は「笑顔になると楽しくなるというのは、脳科学的にも正しいでしょう」と話す。人は笑顔になると、脳の腹側被蓋野とよばれるドーパミン神経系の拠点が刺激されドーパミンが放出される。それが腹側被蓋野の先にある側坐核という快楽や幸福感を司る部位を刺激することで、幸せな気持ちになる。池谷教授は「最新の研究では、笑顔でなくても、楽しいことを考えるだけでも、体の免疫力が上がるということがわかっています」と付け加える。

笑顔で幸福になれ、健康も増進する。いいことずくめではないか。