人は何かに追われるようにして、頑張ってしまうもの。しかし、それで幸せな人生なのか? 脳科学と哲学の世界から検証する――。
「幸福になるための一番の近道はポジティブになること」
幸せになりたいと願っていても、思うようにいかないのが人生。しかし、大切なのは気持ちの持ちようだ。山口大学国際総合科学部の小川仁志准教授は「幸福になるための一番の近道はポジティブになること。要はマイナス要素をマイナスと捉えない。そうすると落ち込むことがなくなり、常に幸福でいられます」という。
「病は気から」ではないが、こうした哲学の教えは、脳科学でも次第に裏付けられつつある。哲学と脳科学。一見、縁遠そうに思えるが、近年の研究で、2つの学問は親和性が高いことが明らかになってきている。
東京大学薬学部薬品作用学教室の池谷裕二教授は「MRI(磁気共鳴画像診断装置)などで脳のメカニズムが解明されつつあり、哲学や心理学の領域から脳科学へのアプローチが進んでいます。脳研究の学会には心理学者や哲学者が数多く参加しています」と話す。
小川准教授も、「古代ギリシャ時代から二千数百年かけて、いわゆる『ロゴス』、論理と言葉で考えてきた営みを、いま脳科学が証明しようとしており、成果に期待しています」と語る。
このように融合が進む哲学と脳科学を通して、幸福になるための「頑張らない生き方」を探っていこう。