図表1
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図表1

ハーズバーグは多くの技師および経理事務職員に面接して、彼らがこれまでの会社生活で“強い満足”または“強い不満”を感じた経験を思い出してもらい、それらの経験がどのような状況下で起きたのかを詳しく語ってもらった。このようにして3500件を超える満足体験、不満体験の事例が集められたが、彼はそれらに含まれる事象を「達成」、「承認」(成果が上司に認められる、など)、「仕事そのもの」(仕事の内容が興味深いなど)、「責任」(責任の重い仕事をまかされる、など)、「昇進」、「成長」、「会社の政策と管理」、「監督技術」、「監督者との関係」、「作業条件」、「給与」、「同僚との関係」、「部下との関係」などに分類し、それぞれが満足体験の原因であった割合、不満体験の原因であった割合を求めた。図表(1)はその結果である。

図表から明らかであるように、要因によって、満足体験の原因になった割合と不満体験の原因になった割合には明らかな違いがある。たとえば「達成」に分類された事象は、満足体験の原因になった割合は約40%、不満体験の原因になった割合は約10%で、明らかに満足体験の原因になった割合が高い。同様に「承認」以下「成長」までは満足体験の原因の割合が不満体験の原因の割合よりも高い。そこでハーズバーグは、これらを「動機づけ」要因と呼んだ。

一方、図表の「会社の政策と管理」は、不満の原因となった割合が約35%に対して、満足の原因となった割合はわずかに3%にすぎない。以下「部下との関係」までは、不満体験の原因の割合が、満足体験の原因の割合よりも高い。そこでハーズバーグは、「会社の政策と管理」以下「部下との関係」までを、「衛生要因」と呼んだ。ちなみに、衛生と呼んだのは、これらの要因の充実は、不満の予防になるからである。“満足は動機づけ要因から生まれ、不満は衛生要因から生まれる”という「動機づけ・衛生要因理論」は単純明快でわかりやすいが、文化が異なる日本に、そのままあてはまるのであろうか。

私は、ハーズバーグの理論が、文化の異なるわが国に通用するかどうかを見るために、さまざまな機会に、管理者、男女一般従業員を含む約600人の日本人にハーズバーグと同様な調査をアンケート法で行ったが、結果は大筋でハーズバーグのそれと一致した。つまり日本人のデータでも、満足は主として動機づけ要因から、不満は衛生要因から生まれており、この理論が日本でも通用することが確かめられた。