問い合わせメールはおざなりではないか

工場の移転先を探す前に、香港に確認する点は多い。

(1)海賊商標の認められる可能性はどの程度か? 高いか低いか? その根拠は?
(2)現地の業者の人物像も不明である。相手は同業者か? 商標ブローカーか? どんな経歴の人物か?
(3)現地の業者の商標出願に異議を申し立て、登録までの時間を引き延ばすことができるか?
(4)徹底的に争えば、どのくらい引き延ばせるか? 1年か、2年か、3年か?
(5)異議を申し立てるにはダミーを使う方がよいか? 現地のダミーは簡単に見つかるか?
(6)異議の認められる可能性はどの程度か? 高いか低いか?

K社の担当者は、企画も営業も渉外も担当している。法律の知識は乏しい。香港への問い合わせも、おざなりではないか?

そう見当をつけた。小さな会社ではよくある例である。聞いてみると、担当者と香港の弁護士とのやりとりは、やはりメールによる通り一遍のものだった。

ポイントを突かなければ、ありきたりの回答しか得られない

Kブランドを中国で使用してきた背景を説明もせず、相手の商標出願が認められた場合の対応を問い合わせただけ。法律意見書の形で回答をもらったわけでもない。K社は、Kブランドを中国でも少量だが長く販売してきた。そのことを香港の弁護士に説明していない。弁護士も、K社の事情を知らずに一般的な返事をしただけ。「法律相談」としてのコミュニケーションがされていなかった。

ポイントを突いた問い合わせをしなければ、ありきたりの回答しか得られない。香港の弁護士にとってK社は一見の客で、しかも報酬はせいぜい10万円程度である。スタッフが回答のドラフトを作り、パートナー名義で返事したのだろう。まさか数千万円の経営判断にかかわる問題だとの意識はないはずである。