会社員の夫が死んだ、専業主婦の妻は「6~7割」

【ケース2:夫が会社員・妻が専業主婦の場合】

次に、夫が会社員で、妻が専業主婦のケースです。

会社員の夫が亡くなると、妻は「遺族厚生年金」を受け取れます。ケース1と同じく、遺族厚生年金の金額は、夫の老齢厚生年金の75%です。専業主婦であれば、厚生年金に加入していませんので、夫の遺族厚生年金がそのまま受け取れます。

夫の老齢基礎年金、企業年金などもケース1と同様に支給がなくなります。夫が会社員で妻が専業主婦だった場合は、世帯全体でみると、6~7割程度になることが多いでしょう。

【ケース3:夫がフリーランス・自営業の場合】

最後に、亡くなった夫がフリーランスや自営業だったケースです。

フリーランス・自営業者は、会社員と違って、厚生年金に加入していません。よって、遺族厚生年金は支給されません。国民年金から「死亡一時金」として、12万円~32万円が一度だけ支給されます。ただし、夫が亡くなったとき、18歳未満の子どもがおらず、妻の年齢が60歳~65歳であれば、その間のみ「寡婦年金」が支給されます。支給額は、夫の老齢基礎年金の75%です(※3)

※3:寡婦年金を受け取る条件には、その他にも、亡くなった夫が10年以上保険料を納めている。婚姻期間が10年以上ある。妻が老齢基礎年金を繰り上げ受給していない。といったものがあります。

フリーランスや自営業者は個人型確定拠出年金「iDeCo」で

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このように、フリーランスだった夫が亡くなった場合は、夫の分の年金はほぼなくなります。夫がフリーや自営業で、妻が会社員だった場合は、少なくとも妻自身の老齢基礎年金・老齢厚生年金があるため、世帯全体の収入はそれ程減りません。しかし、妻もフリーランス、あるいは専業主婦であった場合は、年金額はかなり少なくなることが予想されます。

近年、働き方の多様化によりフリーランスとして働く人は増えており、政府はフリーランスの社会保障についての議論を始めています。しかし、法案提出の目標は2021年。何らかの社会保険が整備されるとしても、まだまだ先のことになりそうです。

フリーランスや自営業者は、個人型確定拠出年金「iDeCo」(※4)や国民年金基金などの制度を利用して、年金の上乗せをしておくことをおすすめします。

※4:ぜひ過去の連載記事を参照ください。「手取り足取り 日本一簡単なiDeCo加入法

ちなみに、ケース1、2でご紹介した遺族厚生年金・寡婦年金・死亡一時金などの遺族年金は、すべて非課税です。所得に含まれないため、仮にいくら遺族年金を受け取っても、他の収入が少なければ、家族の扶養に入ることや、健康保険の被扶養者になることができます。