しかし、今回はいったん立ち止まるべきだと思う。ただし、普天間基地の辺野古移設を諦めるということではない。普天間基地の辺野古移設問題がなぜこのようにいつも紛糾するのか。この根源的な原因を考えて、それへの対策を講じるべきだと思う。まさに問題解決能力を発揮すべきところである。

(略)

結論から言えば、この解決策は「手続き法」の制定である。

地方自治体である行政が何か施設を作る時、それも小さなものではなく、巨大なインフラだったり、さらにそのような個別の施設を超えて、街づくりの計画にあたる都市計画だったりを作る時に、一方的に勝手に作ることはできない。

住民の意思を何重にも確認していく手続きを踏んでいかなければならない。都市計画の決定にあたっては、公聴会を開き、計画案を縦覧に付し(住民が見ることができるようにし)、住民の意見を受け付け、さらに審議していく。意見の受け付けについては、法律だけでなく市町村の条例などでも詳細に定められている。

米軍基地というのは、住民生活に多大な影響を与える施設であるし、ここは僕は大いに問題があると思っているところだが、地方自治体の行政権のみならず日本政府の行政権も及ばない治外法権的な施設なんだ。地方自治体は当然、日本政府であっても、米軍施設に立ち入り調査などはできないし、訓練の制限をかけることもできない。

こんな施設を、政府という行政が、住民の意見をしっかり聞く手続きを踏まずに、一方的に作ったり、移設したりすることが許されるのか。

今は、米軍基地をどこに設置するかは、日本政府とアメリカ政府の協議に基づき、日本国民に対しては一方的に決めることができることになっている。ここが、普天間基地の辺野古移設がずっと紛糾し続ける根幹原因なんだよね。

先日、憲法学者の木村草太さんと憲法について対談を行なった。木村さんはこの点に強い問題意識を持っており、米軍基地を日本国内のどこかに設置するには、憲法92条に基づいて設置する自治体を対象にした個別の法律を作り、政府に法律上の設置権限を与えなければならない、との意見だった。そうすると特定の自治体を対象にする法律を作ることになるので、憲法95条によって、その自治体において法律の可否を決める住民投票を実施しなければならなくなる。

つまり木村理論でいけば、沖縄県や沖縄県の市町村に米軍基地を設置するには、沖縄県や沖縄県の市町村における住民投票を実施しなければならなくなるんだよね。

これは、傾聴に値する意見だ。

木村さんの意見でも、米軍基地が治外法権的な施設ではなく、政府や自治体の行政権がしっかりと及ぶ施設になれば、憲法92条に基づく個別の法律は不要になるらしい。そうなると憲法95条に基づく住民投票も不要になる。しかしそのためには、米軍基地に対する政府や自治体の行政権を制限している日米地位協定の抜本的な改定が必要になってくる。