SCの出退店情報を基に業種構成の変化を即座に把握

順応速度を高めるためのひとつの課題は、ECの急拡大によって、刻々と変化していくSCの状況をいかに把握するか、である。

今回はSCトレンド研究所のデータをもとに、SCの状況を分析してみたい。同所では、全国の商業施設ホームページから毎月出退店情報を収集したデータベースをもとに、把握したトレンドを随時レポートとして公開している(https://sc-trend.jp/)。さらに有料データベース「SC GATE(エスシーゲート)」では、直近1年間の出店ランキングなどから勢いのあるショップ・ブランドや業種構成がわかる。

SCトレンド研究所の母体となる株式会社リゾームは、岡山市に本社をおき、顧客分析システムや経営分析システムを開発、提供してきた。全国各地のSC事業者、流通企業などがクライアント(顧客企業)に名を連ねる。SCのテナント・ミックスや出退店を検討する際の検索ツールとしてSC GATEを構築した。

東京ミッドタウン日比谷の開業で、街はいかに変わったか

SC GATEを使えば、街の顔ともいえるSC変化を、迅速に把握できる。

2018年3月には東京ミッドタウン日比谷がオープンした。銀座と丸の内に挟まれて、商業ゾーンとしては注目度の低かった日比谷エリア。東京ミッドタウン日比谷の開業がもたらしたのは、どのようなショップ構成の変化だったか。

SCトレンド研究所のレポートによれば、それは飲食店の充実である。東京ミッドタウン日比谷の開業によって、同エリアのSCの構成は、ファッションを中心とした銀座型から、飲食を中心とした丸の内型に一変している。

ファッション関連ショップの減少は全国共通

全国のSCの変化についてはどうか。2017年度の1年間の全国のSCにおける出退店動向を洗い出してみよう。

これまでSCの目玉は、飲食と並んで、ファッション関連ショップだった。だが、近年は落ち込みが指摘されている。実際に2017年度のSCへの出退店動向を見てみると、ファッション関連のショップは平均で5%程度のマイナスだ。個別には退店するショップもあれば、新たに出店するショップもある。しかし全体としてはファッション関連ショップは減少傾向にある。そしてこの動きは地方都市と東京都区部で共通して見られる。ショップ・ブランド別の出退店数で見たときにマイナスが大きいのは「グリーンボックス」(イオン)「オペラハウス」(ラブリークィーン)、「ジ・エンポリアム」(ワールド)などである。