実力主義 新卒10年33歳で役員登用の事例も

──優秀なスタッフを育成する方法とは何でしょうか。

スタッフの能力を鍛えるためには、経験の積み重ねが必要です。ただ単にマニュアルを丸暗記するだけでは意味がありません。そのために接客スーパーバイザーといった指導員を地域ごとに設けて、先輩が後輩を育てていくというスキームを採っています。外部の専門家を呼んで研修することは、ほとんどありません。あくまで先輩と後輩の関係から仕事を身に付けることを、重視しています。

ただし、基本は実力主義です。能力があればどんどん引き上げていく。新卒10年、33歳で役員に登用した事例もあります。抜擢して結果が出たら、もっと重要な仕事を任せる。だから、頑張る人は出世が早いし、重要な役職を担ってもらう。その人にたくさん給料を払っても、それ以上のメリットがある。優秀な人に3倍の給料を払ったとしても、仕事が5倍、10倍できたら、そのほうがコスト的に少なくて済みます。

また、収益を高める人材を育てるため、創意と工夫を意識し、アイデアを出してくれる人を評価しています。社内では無駄を排除する企画を募集する「金脈発掘コンテスト」や、会社の評価や評判に貢献した従業員の成功談を発表する「成功事例コンテスト」など、さまざまなイベントを行っています。さらに経費10%、仕入れ注文費10%、残業の削減などによる人件費5%の削減を目指した「10・10・5運動」も実施。高評価の従業員は表彰し、報奨金を与えるなど、改善を意識させる取り組みを毎月、各支店などで行っています。

──人材育成に関して、参考にした企業はありますか。

私は同業他社の真似はしませんし、調べたりもしません。これまで同業他社とは全く違うことをやってきたつもりです。新都市型ホテルのスタンダードは、私が全くゼロからつくったという自負があります。従来のホテルは、かつての貴族をもてなす召し使いのような、ご主人様と召し使いの関係を踏襲し、ご主人様をもてなすというスタイルが一般の都市型ホテルです。しかし現代は、みんなが対等です。だから、ゲストとスタッフも対等であるというのが私たちの一番の理念です。一口に言えば、アパの経営は誇りなのです。誇りを持って泊まっていただける方に、誇りを持っておもてなしをする。これからのホテルはそうした考え方に収斂されていくでしょう。