ただ、最初からうまくいっていたわけではありません。

駿台に勤務して2年目の時点では、季節講習会での私の講座の売上は年間で80万円ほどだったと記憶しています。このままだったら完全に赤字講師です。つまり、クビ候補です。

予備校業界というのは通常1年間の契約で、業績が振るわなかったら即契約解除になってしまう厳しい世界でもあります。駿台は比較的優しくはありましたが、それでも業績を上げられなければ仕事は減ってしまいます。

説明スキルを磨いて「年収5倍」に

そのため、売り上げを上げられなかった当時の自分は、「このままだと仕事がなくなってしまう」と思い、稼ぐことができている超一流の人気講師の授業を徹底的に分析しまくりました。

そこで見いだしたのが、今回お話しさせていただく「稼げる説明スキル」です。

このスキルを自分に取り込んでからというもの、年々仕事が増えていき、それに伴い年収も上がっていきました。

そして、入社9年目のときは、季節講習会で私の講座の売上は5000万円を超え、年収も入社当時の5倍ほどになりました。

この理由は、シンプルです。

予備校講師が講義で生徒にわかりやすい説明することで、生徒の学力はアップします。つまり、私の講義を受けることで、生徒の目的である「大学合格」に近づくという一種の“期待感”が生徒の中に出てくるのです。

つまり、聴き手である生徒にとってはリターンが見込めるわけです。だからこそ、高い受講料を支払ってまで私の授業を受講してくれるのです。

稼げる人は、相手の感情をうまく刺激する

ところで、ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンという人物をご存じでしょうか。彼は自著で次のように述べています。

「人は“勘定”ではなく、“感情”で判断する」

人というのは、単に1000円もらうよりも、「本当にありがとうございます! すごく助かりました!!」のような感謝の言葉をもらったり、他者や社会に貢献できている実感を持ったりすることのほうがうれしかったりもします。

つまり、人間というのは、物事を金銭で合理的に判断するのではなく、部分的には合理的だけども結局は感情で動く限定合理的な“感情人”だというのです。

「稼げる人」というのは、自分が提供した商品・サービスに対して対価を得ることに長(た)けた人です。言い換えれば、金銭面のメリットだけを提示するだけでなく、その商品・サービスを購入して得たときの「感情」を刺激する説明がきっちりできる人なのです。