特に、大学入試のような短期間で成果を出さなければならない状況ではそれが顕著に表れます。成果を出せなかったら、つまり合格できなかったらフリーターか、浪人か、何ものでもなくなってしまうという恐怖が、常に受験生にはついてまわります。

「損失を回避したい心理」をピンポイントで刺激

つまり、カーネマンのプロスペクト理論に従うのならば、人はできるだけ損失を回避したいという心理状態をもつ傾向にあり、そこをピンポイントで刺激してあげることで、人を行動に駆り立て、成果に結びつけるのです。

犬塚壮志『東大院生が開発! 頭のいい説明は型で決まる』PHP研究所

もちろん、ウソや過剰な表現は倫理的に避けるべきことです。

ただ、確実に相手がリスクにさらされるのであれば、説明する側は気後れせずにしっかりとそのリスクを相手に伝えることも大切だと私は考えています。その結果、聴き手が望む結果を得ることができる確率が上がるのならば、積極的に伝えてあげたほうがいい。

つまり、自分の利益を先行させるのではなく、相手のために「実際にその説明を聞いていなかったら、損をしてしまうよ」ということをしっかりと伝えるべきなのです。その結果が自分の売上につながれば良いのです。

ちなみに、私の場合はプロスペクト理論を少しアレンジして自分の説明に用いました。「損失回避+期待感(励まし)」というセットでの説明です。

例えば、

「これができなければ入試の本番で失点してしまう可能性は確かに高い。でも、これから話すことを吸収してくれたら、絶対に今日中にできるようになるから心配はいらない。大丈夫!」

このように、説明の端々に「損失回避+期待感(励まし)」を入れ込んでいくことで、聴き手を行動させ、成果を得られるよう促してくのです。

結果、自分が稼げるようになるのです。

たかが説明と思うことなかれ。わかりやすい説明は、現代の情報化社会において必須のスキルです。

犬塚壮志(いぬつか・まさし)
士教育代表取締役。福岡県久留米市出身。元駿台予備学校化学科講師。大学在学中から受験指導に従事し、業界最難関といわれている駿台予備学校の採用試験に25歳の若さで合格(当時、最年少)。駿台予備校時代に開発した講座は、3000人以上を動員する超人気講座となり、季節講習会の化学受講者数は予備校業界で日本一となる(映像講義除く)。さらに大学受験予備校業界でトップクラスのクオリティーを誇る同校の講義用テキストや模試の執筆、カリキュラム作成にも携わる。タレント性が極めて強い予備校講師時代の経験を生かし、パーソナルブランディングなど価値創造を重視した教育プログラムをビジネスマンや経営者に向け実践中。
(写真=iStock.com)
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