世界トップ3をオンライン旅行代理店が占める中……
──その背景には、どんな危機感があるのでしょうか。
一番の危機感はデジタル化による急激な市場環境の変化です。我々はこれまでリアルエージェント(実店舗を持つ旅行代理店)として業界をリードしてきましたが、現在、世界のトップ3はすべてオンライントラベルエージェント(実店舗を持たずにインターネット上だけで旅行商品の取引が完結する旅行代理店)が占めています。あらゆるものがネットに通じていく中で、我々が全く予想もしなかったような新しいビジネスモデルが続々と生まれている。シェアリングエコノミーなど新しいビジネスモデルを引っ提げた競争相手がグローバル規模で押し寄せています。
そうした世界の潮流の中で、旅行の手配業務による“コミッション(手数料)”ビジネスはこのままだと自ずと限界を迎えていくはずです。では、どうやって生き残っていけばいいのか。その答えの1つがコミッションではなく、JTBならではの商品・サービス・情報・仕組みを提供し、お客様の感動・共感を呼び起こすことによって“フィー(報酬)”で稼ぐということなのです。例えば「お父さんが定年退職を迎えたので、旅行をプレゼントしたい」というとき、旅行は「目的」ではなく「お父さんを喜ばせるという課題解決のための手段」となります。オーダーメード型商品などが既にありますが、お客様が旅に託した本当の目的、お客様も気づいていなかった課題解決の実現に向けてコンサルティング力を強化し、フィーで稼げるようにしていきたいと考えます。このように「第三の創業」には従来の収益構造を大きく変えていく狙いもあるのです。
脱・旅行業で、次の100年を創る
──そのためにシリコンバレーなど海外視察にも力を注がれていますが、その目的と成果は何でしょうか。
創業から100年以上、我々は対面販売を主戦場として、個々のお客様に寄り添った「ヒューマンタッチ」のサービス提供に力を入れてきましたが、これからはそこにデジタルを融合させ、お客様にとっての価値を最大化できる会社に変わらなければなりません。旅行事業の進化、非旅行事業の充実が重要になってきます。そのヒントを見つけるためにシリコンバレーを視察したのですが、現地では将来的に事業の種となるような新しいビジネスがたくさん芽吹いています。まずはその現状を把握し、必要であれば、出資や業務提携などを含めて、あらゆる手立てを講じていきたいと考えています。
海外は徹底的にデジタル化が進んでいます。我々もあらゆる手を尽くして外部から異能異才の「人財」を社内に確保して対応しなければならない。ただ、それで長年にわたり磨いてきた「ヒューマンタッチ」の接遇がなくなるわけではありません。それこそが我々の最大の競争力であり、デジタル勢に対抗していくための大きな武器だと考えています。