●訴訟からの保護
人事考課では、個人のパフォーマンスを記録した証拠書類が残る。社員を解雇せねばならないとき、この記録は会社を訴訟から守ってくれる、と、理論上はいわれている。しかし実際はそうではない、と専門家は指摘する。評価の頻度は少なく、使われている言葉は往々にして曖昧だ。つまり、ほとんどの記録が、有能な弁護士なら裁判で簡単に切り崩せる矛盾をはらんでいる。
より効果的なのは、解雇のおそれがあるごく少数の社員だけを対象にした特別評価制度だろう。
人事考課を廃止すれば、企業は昇進候補者を見きわめる方法も新しく編み出さなければならない。社員の訓練ニーズを把握し、スキル構築の機会を活用するのを促さなければならない。こうした課題があるため、人事考課を廃止することは骨の折れる大事業だ。
はたしてその骨を折るだけの価値があるのか。多くの企業が「ない」と判断するだろう。しかし一部の企業は、評価を廃止することで、自分たちが当然視している経営管理慣行を見直す必要があることに気づくかもしれない。さらに、マネジャーも、一般社員も、新しいやり方を気に入り、それだけで離職率が下がることにも気づくかもしれない。
(ハーバード・マネジメント・アップデート編 翻訳=ディプロマット)