当時の福井県は、2007年の前田工繊株式会社以来、10年間上場企業が誕生していなかった。そんなベンチャー不毛の地で、業務用ユニフォームを扱う従業員3名の会社が急成長を遂げ、県内10年ぶりの上場を果たすと誰が予想しただろうか。

「福井にもこんなすばらしいベンチャー企業が存在するのだ」と知った時の衝撃! それまでは都会をマネしてスタートアップの若い創業者ばかりを追いかけていたが、横井社長の存在をきっかけに、地元に根付いて奮闘しているベンチャー志向の若手後継者が福井にはたくさんいることを知った。

地方を救う“後継ぎベンチャー”の存在

伝統産業や製造現場、観光資源など、都会に比べてモノが豊富にあるという地方ならではの強みを活かし、今までの物流ではあり得なかったモノの売り方を積極的に取り入れていくことで、ビジネスチャンスは一気に広がる。

時流を逃さず、新しい技術やアイデアをうまく取り入れて事業を成長・拡大させた若手後継者たちが地方で新しい風を起こしている。これが地方ならではの“後継ぎベンチャー”だ。「ついに地方特有のベンチャー人材発掘の金脈を見つけた!」と私は意気込んだ。

「VCからの投資」という概念自体も持っていない

彼らを含めて福井では、ベンチャーキャピタルから資金を調達するという概念自体もっていない経営者がほとんどだ。事業を拡大させる場合は、自己資金でなんとかするか、自己資金にプラスして金融機関から借り入れをするというケースが多く、それ以外の選択肢となると、補助金を活用するのがせいぜいだ。スピード感をもって資金調達できないがゆえに、大きく成長するチャンスを逃してしまうというケースも少なくない。

そんな彼らに、ベンチャーキャピタルから投資を受けることもまた資金調達の選択肢の一つとして考えられるような場を提供できたら、福井でがんばるベンチャー企業の役に立てるのではないか。そう気づいてからは、福井だからこそ開催できるピッチイベントのイメージが固まり、素人ながらも自信をもって企画に取り組むことができた。