都会とは一線を画する“地方ならではの特色”

紆余曲折を経て、2017年10月に県内初のピッチイベント「福井ベンチャーピッチ」を開催した。ピッチイベントでは、都市圏から集まったベンチャーキャピタルや地元の金融機関を前に、福井のベンチャー企業5社が自社の商品やサービスの魅力をプレゼンテーションした。

登壇企業の複数社に、出資や事業提携のアプローチが殺到し、福井ベンチャーピッチは初開催にして一定の成果を上げることができた。

中でも、後継ぎベンチャーの活躍は目覚ましい。

家業のガラス屋が買収されたことをきっかけに独立し、細分化した24の専門サイトを立ち上げて業界に新風を起こしたガラスのウェブ販売会社や、電子部品会社の後継ぎとして育ちながらも「自分の力を試したい」という思いから全く異なるビジネスモデルで学生起業し、インターネットを使ったオシャレの教育事業で急成長を遂げたメンズファッション通販会社、家業のクリーニング業を継いだものの業績が縮小する中で新たな事業展開を模索し、ブランドの革製品に特化して修復を行うウェブサイトを立ち上げて見事に第二創業を果たした革修復専門会社など、第二、第三のユニフォームネクストを目指す後継ぎベンチャーが続々と登壇して注目を集めた。

都会とは一線を画する“地方ならではの特色”を打ち出せたことで、福井ベンチャーピッチは定期開催の実現に成功し、9月には3回目を迎えようとしている。

多くの人が集まった「福井ベンチャーピッチ」

打ち上げ花火で終わらせないために

地方開催のこういったイベントは、打ち上げ花火のように1回きりで終わってしまうケースが多く、福井のような地方の県が単独で、ピッチイベントを定期開催している事例は全国的にも珍しいと言われている。

地方にはそもそもベンチャー企業の卵が少ないため、登壇企業の発掘が進まず、ベンチャーキャピタルの誘致に難航するなど、ピッチイベントのクオリティを維持し続けることが難しいからだ。