成果主義時代の新たな派閥形成メカニズム

単純な成果主義は、社員のモチベーションを低下させる。成果主義の原点は、全員を同じスタートラインに立たせて必達目標(コミットメント)を強いるシステムなので、社員の“やらされ感”を強めている。目標設定は上司の一方的な意向や、根拠なき憶測で決まるものも現実的にはある。目標管理に楽しむ要素があれば精神的な余裕も生まれるが、その要素はさほど見当たらない。成果主義は本来のやる気を削ぎ、ある意味仕事が辛くなるのは当然だと思わせるシステムになってしまっている。

そうした成果主義がもたらした荒波を「自分だけはなんとかしてかいくぐりたい」という思いから新たな動きが見られる。それが新タイプの派閥の発生だ。この派閥は従来からある、経営のイニシアティブ獲得をねらった、社長派vs専務派といった形とは全く異なり、成果主義でプラスの査定を入手するためのものだ。

現状のままでプラス評価を手に入れるためには、個人で手堅くクリアできる目標を掲げるか、評価される力を外部から見つけてくることに尽きる。

競争が激化するなかでは、上司から高い目標が求められるため、目標を甘めに設定することは難しい。「定年近くまでは働いていたい」と思うなら、自分以外の力を頼みに、自己防衛のために生き残りをかけ派閥に所属するしかない。派閥にくみすることで、ある種の保証を得るのだ。これは、「イジメられたくない」「信頼はおけないが、生き残るためには強そうな奴の子分になる」といった子ども社会のイジメ防衛策と似ている。派閥に属して危機を乗り切ることは、人間の本能なのかもしれない。

新タイプの派閥について具体的に説明しよう。たとえば、革新的な業務ではないものの、それなりの成果が出る仕事をしているAチームと、巨大プロジェクトではあるが、簡単には成果が出ない業務に従事するBチームがあるとする。Aチームの仲間になったほうがここ3~5年の生活は、安定する。そこでAチームに所属することにする。