モンスターペアレンツに疲労困憊な先生が増えている
筆者は私立中学校を取材する機会が多くあるのだが、そのたびに「先生という職業は大変だな」としばしば感じる。その責任の重さに対して、給与や労働時間、心労の度合いが余りにアンバランスに思えるからだ。
その原因のひとつは、保護者の「過剰な要求」にあるのではないだろうか。ある中高一貫校のベテランの先生が、ある日、筆者にこうこぼしたことがある。
「学校は旅行会社じゃありません。でも、今の保護者は学校から各種オプション付きのパッケージ商品を購入したと勘違いしているんです」
つまり、学習面は当然のこと、健康、生活、人間関係、しつけにいたるまで、子どもに関するありとあらゆることは学校任せで、うまくいったら“お買い得”、うまくいかなかったら“学校のせい”という意味だ。
わが国では「お客様は神様」という過剰な顧客サービスが、一部のクレーマーを増長させているという意見がある。同様に、少子化で保護者から選んでいただく立場になっている私立学校には、こういう悩みを抱える先生が増えているように思う。
このとき考えたい概念が「モンスターペアレンツ(モンペ)」だ。モンスターのように学校にクレームをつける親(ペアレンツ)のことを意味する。筆者は大まかに2種類の「モンペ属」が生息していると推察している。
平気で「携帯代金を負担してください」という親
ひとつが「コスパ重視の金換算属」だ。
先日、中学受験塾の先生が嘘のような話を教えてくれた。
「『志望校に入れなかったのは塾の指導法が悪かったのだから、かかった費用を返金してほしい』と真顔で保護者に何度も訴えられ、お引き取りいただくのに大変、苦慮したんです」
これと同じような「金返せ」と主張する保護者の話はよく耳にする。
例えば、ある小学校では保護者から校外学習(草花観察)について、こんなクレームがあった。
「わが子が草木でかぶれて、皮膚科に通うことになったのは、事前のプリントに『長袖、長ズボンを用意せよ』と書かれていなかったせいである。学校に落ち度があるのは明白。よって、治療費と傷が残るかもしれないので慰謝料を払え」
また、ある中学では宿泊学習を風邪で欠席した生徒の親から「不参加なのだから、全額返金せよ」というクレームが届いたそうだ。
さらには、ある高校の先生からはこういうことを聞いた。「校内では携帯電源オフ」という校則に違反したので、その生徒の携帯を没収したところ、親が取りに来ないので預かっていた。すると1カ月後に親が現れて、先生にこう告げたそうだ。
「この1カ月分の携帯料金は(携帯が学校にあったのだから)学校で負担してください」
世の中にはいろいろな考えの人がいる。先生方も、何をどう説明すべきか、頭を悩ませることだろう。