アンガーマネジメントは、怒る必要があるのか、ないのかを適切に峻別する技術です。不必要に怒ることは避けられるように、必要がある場合は、適切な怒り方ができるようになる、その状態を目指しています。
「ノー残業」を強いる上司に怒りを覚えたAさんの例
今回とりあげるのは、「働き方改革」に関して起こったAさんの事例です。
相談者のAさんは、あるITシステム会社の営業職。彼の上司は、モーレツ型の営業員で、「お客さまのためなら労を惜しまない」ことを掲げてきたそうです。
しかし、会社が「働き方改革」の旗を振り始めたのをきっかけに、残業を厳しく管理するようになりました。一方、売り上げ目標は変わらないまま。競合との競争は厳しく、残業規制の事は知りながら、受注を獲得するためにAさんは遅くまで提案を練る日々が続きました。
そんなAさんに、上司は「早く帰れ」と毎日のように注意してきます。時には、Aさんの机までやってきて「まだ終わらないのか?」「効率が悪いんじゃないのか」と声を掛けることもあったそうです。
そんな上司の態度にイライラすることが続いたものの、Aさんは抗議の言葉を飲み込んで、表面的には従順にしていました。しかし、徐々に不眠や食欲不振を覚えるようになってしまい、私のところへ相談にいらっしゃいました。
怒りに任せて反論したいという衝動をやりすごす
Aさんの例にみられるように、「怒り」の感情は、私たちの健康にまで大きな影響を及ぼします。Aさんは、ご自分の怒りをどうマネージしたらよかったのでしょうか?
まず避けなくてはならないのは、怒りを感じたときに、反射的に対応してしまうことです。衝動に駆られて反射的に行動するのは、最も後悔につながりやすいからです。反論する場合は、怒りの衝動に駆られて勢いで反論するのではなく、冷静な状態で行うことが必要なのです。
怒りの衝動が収まり、理性を取り戻すのに必要なのは約6秒と言われています。したがって、怒りの衝動に駆られたら、6秒間はその衝動をやり過ごすための行動をとります。