言いたい放題のわがまま上司、ヒステリックな妻……、身勝手で迷惑な人に目を付けられる理由と、自分の身を守るための対処法を専門家に聞いた。

「過度な欲」が、敵を呼びこむ

会社員なら誰しも、多少なりとも上司や先輩に振り回された経験があるだろう。たとえ腑に落ちなくても、先輩や上司に従っておくほうが得策となることもある。

他人を平気で振り回す人が、権力や影響力を持つ場合ほど、厄介なことはない。その代表が、アメリカ大統領 ドナルド・トランプ氏だ。(AFLO=写真)

問題は、上司や先輩から過剰に、あるいは理不尽に振り回されて疲弊してしまう場合である。子分や道具のようにみなされて、四六時中支配されるようになったら、一刻も早くその状況から脱するべきだ。

精神科医の片田珠美氏は次のように解説する。

「状況を改善しようとして上司や先輩の言動が変わるように働きかけても、それはムダ。なぜならば、性格の核になる部分は18歳を過ぎると、余程のことがない限り、本質的には変わらないからです。振り回されている人は、自分自身の考え方を変える努力をしなくてはいけません」

そのためには、まず振り回されてしまうメカニズムを押さえておきたい。振り回されてしまう人は、実は振り回されやすい要素を持っていることが多いのだ。

「振り回す人に支配されやすい人を『イネイブラー(enabler)』と呼びます。直訳すると『~できるようにする人』。振り回す人の問題行動を助長する身近な人のことを指します。もちろん、一番悪いのは振り回す人ですが、実は振り回されている人も、振り回す人が『少々のことは許される』と思い込む状況をつくってしまっているのです」

自分が上司から怒られるのは、自分の不手際や能力不足のせいだと思い込んでいる。また、上司に対して萎縮していて、波風を立てたくないという願望も強い。このような意識が、相手の振り回し度合いをヒートアップさせている可能性がある。

「他力本願」の傾向が強い人も危険だ。これは、騙されやすい人の特徴と重なる点が多い。投資詐欺などに遭う人を想像してほしい。詐欺は騙すほうが悪いが、騙される側にもそれなりの原因があると言われる。

「共通するのは、被害を受けた側の過度な欲が原因である点。投資詐欺の類いは、楽をして利益を得ようとする人がひっかかりやすいもの。つまり、騙す人は、騙される側の欲につけ込んで話を持ちかけるんですね。職場に当てはめると、自分の言うことを聞いていれば出世できる、などという上司の言葉を信じて愚直に従ってしまう人が振り回される。相手の話を真に受けてしまう点も、振り回される原因になっている。こういう人はまず、相手の話をよく分析し、疑ってみる姿勢が必要です」