現代社会はストレスに満ちており、「怒り」のタネはあらゆるところにあります。しかし怒りに身を任せれば、大変なことになります。どうすれば自分の怒りをコントロールできるのでしょうか。キャリアコンサルタントの朝生容子氏は「怒りの衝動に駆られたとき、理性を取り戻すまで6秒かかるといわれています。まず6秒は我慢するべきです」といいます――。(第1回、全3回)
「アンガーマネジメント」とは「怒り」を抑え込む方法ではない
筆者は、キャリアコンサルタントとして、働く上での悩みについて、年間200~300人から相談を受けています。そうした中で、「怒りで職場での人間関係が悪化した」「怒りのあまり会社を辞めた」といったように、「怒り」がキャリアに大きな影響を及ぼし、後悔している人にしばしば出会います。
自分のイライラやむっとする感情を、何とかしたいと思う人は少なくありません。怒り(アンガー)をうまくコントロールする技術であるアンガーマネジメントは、1970年代にアメリカで生まれた心理トレーニングです。日本アンガーマネジメント協会によれば、統計を取り始めた2012年より6年間で講座や講演、研修を通して、延べ約60万人の人がアンガーマネジメントを受講するなど、その数は増加の一方です。
「アンガーマネジメント」というと、よく「怒りを抑え込む」ための技術と受け取る人がいますが、そうではありません。「怒り」は人間として自然な感情であり、良い悪いと言えるものではありません。アンガーマネジメントの立場では、「怒り」の感情そのものを否定的にみなしてはいないのです。
では、「アンガーマネジメント」とは、何なのでしょうか? 何を目的としているのでしょうか?
それは「『怒り』に関して後悔しないこと」です。
後悔は、怒ったことそのこと自体に対しても起こりますが、「あんな言い方をしなきゃよかった」といった具合に、「怒り方」についても発生します。同時に、「怒らなかったこと」を後悔する人も少なくありません。