介護と医療の共存施設は、ビジネスとして成り立つ

病院は効率化を図るため、病床の機能ごとに入院日数の目標値が設けられている。一定の入院期間が過ぎた患者には保険点数が加算されなくなり、病院にとっての利益を生み出さなくなる。そのため、病院は一定の入院期間を過ぎた患者をいつまでも長く置き留めることができなくなっているのだ。

しかし、治療(キュア)は終了しても、依然として看護は必要となる。さらにそこに高齢による介護も加わった場合、同居家族の負担は相当なものになる。

そんな彼らをターゲットに定め、新たに医療ビジネスを展開する施設がある。横浜市都筑区にある「医心館」は、一見ごく普通の有料老人ホームだ。一階のロビーにはソファやピアノが置かれ、個室には高齢者が寝起きしている。だがその中身は、医療特化型の「在宅療養施設」となっている。

入居の可否は、介護度ではなく医療依存度で判断される。看護師による医療ケアが必要な高齢者に絞って「病床」を提供し、むしろ介護度が高くても医療依存度が低い人は入居を断られることもある。そういった人々はほかにも行き場所があるからだ。

もう1つの特徴は、「施設」でありながら「在宅」の形式をとり、「訪問看護師」と「訪問介護士」がケアに当たるという点だ。しかも、彼らは同施設内ステーションに365日、24時間豊富な人員が配置されている。そこから各個室に“訪問”していく仕組みだ。

訪問予定のないフリーな看護師や介護士は、見守り要員として全館を巡回している。その見守り行為自体は、保険対象外であるため人件費コストは高くつくが、それを見越した経営を実践している。

利用者は通常の有料老人ホームと同様に、家賃と食費を合わせた計15万2500円(税別)を毎月支払い、別途、各自の医療・介護保険適用後の自己負担費を支払うことになる。家賃を支払う各部屋が利用者の「家」と見なされ、そこに「訪問看護師」と「訪問介護士」が通ってくるのだ。