西日本豪雨も含めて日本の減災対策でとくに遅れていると植田医師が指摘するのが避難所で強いられる雑魚寝だ。

「河川氾濫被害が起きた場合、河川に沈殿していた泥や生活排水が混じった土の粉塵が被災地を飛び交うことになります。雑魚寝をしていると土の中に混じった嫌気性の菌が肺に入り、感染症を引き起こしやすい。床から30センチ以上離れた高さで寝る必要があります。避難所によっては段ボール製の簡易ベッドが導入されていますが、それも災害発生から時間がかかっています。ちなみに、2012年のイタリア北部地震では、避難所にエアコン付きのテント村が災害から1日以内に設営されました。同じ災害大国なのに、日本ではインフラとして最優先で整備すべきTKB(トイレ、キッチン、ベッド)が、ないがしろにされています」

なぜ日本では災害発生後の対策が遅々として進まないのか。植田医師は「災害時の対応責任が各自治体の裁量に任せられている点が大きい」と話す。

「日本は地方分権という名のもとに、広島県で起きた災害は広島県、岡山県で起きた災害は岡山県の各自治体の首長が責任を担う。となると、避難所の整備が進んでいる自治体とそうでない自治体の差が生まれてしまううえ、連携も取りづらい。例えば、同じ災害に遭っているにもかかわらず、ベッドが整備されている避難所と未整備の避難所が出てくるわけです。すべての判断は首長のリーダーシップに委ねられてしまいます」

また植田医師は、「もしこれを国防に例えれば、おかしなことがわかるはず」と説明する。

「有事でミサイルが飛んできたときに国民の生命が脅かされたら、国が対策を取るのは急務です。しかし、それが自然災害となると、その責務をそれぞれの自治体が担う。これは国民の生存権を脅かすものではないでしょうか」

毎年のように大災害が起きる日本。植田医師は「災害対応を専門とする省庁の検討が必要です」と話す。

(撮影=鈴木聖也)
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