相手をほめると、たいていのことはうまくいく

2つ目の方法は、あなたが自分本位な人ではなく、聞き手の利益を第一に考えている、と聞き手に思わせることです。『いい質問ですね』と言えば、あなたが相手の質問に真摯に答えようとしていると示すことができます。

最後は、アリストテレスのいう『アレテー(徳)』を示す方法です。『いい』という言葉は、あなたの徳を示すのに大切な言葉です。何がよくて何が悪いのかを見極める力をあなたは持っている、と示すことになるからです」

続けて、ハインリックス氏は言う。

「なにより『いい質問ですね』という言葉は、質問者をほめる言葉です。相手をほめると、たいていのことはうまくいくものです。そう思いませんか?」

レトリック、つまり説得の技術は、語り手と聞き手の関係を構築するところから始まる。聞き手の好感と信頼を得ることができれば、相手を説得しやすくなるのだ。

本書では、古代の文献から拝借して現代の状況に合わせた技法を100通り以上紹介、家庭、学校、職場、コミュニティでの使い方も提案している。「聞き手の心をほぐすためには」「聞き手の怒りを和らげるためには」など、状況に応じた使い方がわかる。

なめらかな人間関係をつくるのに役立ちそうだ。

ジェイ・ハインリックス
ミドルベリー大学教授としてレトリックと演説の授業を担当。NASA、米国国防総省、ウォルマートなどでコンサルティングや講演も行っている。
(撮影=大杉和広)
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