3000年前に古代ギリシャ人が生みだした説得の技術

上司を説得したい、生意気な部下を動かしたい、不機嫌な妻を笑顔にしたい。そんなときに武器になるのが、「レトリック」だ。本書を執筆したジェイ・ハインリックス氏によると、レトリックとは、3000年前に古代ギリシャ人が生みだした説得の技術であり、古代ローマのジュリアス・シーザーやキケロ、そしてリンカーンやオバマは、この技法で自身の演説に磨きをかけ、聴衆の心をつかんだという。

ジェイ・ハインリックス氏

口下手でもすぐに実践できることはあるのだろうか。ハインリックス氏によれば、「相手の目を見ること」も説得をするうえで効果があるという。

「相手とコミュニケーションをとりやすくなります。古代ギリシャの偉大な哲学者で、ソクラテスの弟子にして、アリストテレスの師であるプラトンはこう言いました。『目は心の窓である』。目の周りの小さな筋肉は、疑念、不信感、好意、微笑みなど、さまざまな感情を表すことができます。あなたが心に抱いている感情も、目で伝えることができます」

「私は人と話すとき、自分にこう言いきかせています。『愛情光線を目から出すんだ!』。馬鹿馬鹿しいとお思いかもしれませんが、そうすることで愛情を持って相手に接することができるようになり、絆を結ぶことができるのです」

「いい質問ですね」という返しには、3つの意味がある

また、何かを質問されたときに「いい質問ですね!」と返すのも有効だという。

「語り手であるあなたの『エートス(人柄)』を高めて、『あなたは信頼に値する、好感の持てる人物だ』と聞き手に思わせる方法が3つあります。まず、あなたがその事柄に精通しており、持っている知識を使って、いま起こっている問題に対処できる、と思わせること。『いい質問ですね』と返せば、質問に対して、あなたがこれから的確な返答をしようとしている、という印象を与えます。