「介護に向いている人はどんな人か」と問われ絶句

このようは話をしているうちにKさんは落ち着きを取り戻しましたが、次に「介護に向いている人はいるんですか」と聞いてきたそうです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Satoshi-K)

Kさんによれば「他の人は立派に介護者の務めを果たしているような顔をしている。それが本当なら、できない自分はダメ人間であり、介護に向いていないことになる。多くの介護者を見てきたケアマネさんなら、それがわかるでしょう? 教えてください」というわけです。

「介護に向いている人はいるか」

あまりにストレートな疑問ですが、Mさんはこれまでこのことを考えたことがありませんでした。Kさんに単刀直入に聞かれた際、MさんはKさんの心情を考えて「誰もが介護では苦労されていますし、向いていると思っている人はいないんじゃないですか」と答えましたが、その後、じっくり考えたといいます。そのシンプルな問いは、介護に悩むすべての人がどうしても知りたい切実な内容かもしれないと感じたからです。

Mさんが改めて考えてみたところ、しっかり介護をしている人も、多くは家族の務めだからという義務感のようなものがある。なかには、家族の情などみじんもなく、介護サービスに任せっきりの人も少なくないし、介護を放棄している人だっている。ごく稀に、介護に前向きというか、物事をおおらかにとらえる性格という感じがある。介護の分野を仕事に選んだ自分にしても、仕事だからできているのであって、肉親の介護となれば話は別で義務感が先に立つだろう、という思いに至ったという。

▼「みな気持ちを奮い立たせて介護をしている」

そうやって考えMさんが出した結論は「介護に向いている人はいない」というものでした。

「家族もわれわれ介護事業者も要介護者の状態をよくするために努力するということが大前提ですが、解放されるのは看取りの時であり悲しい努力なのです。そういうことに対して前向きになれて“向いている”と言い切れる人はいるでしょうか。結局、気持ちを奮い立たせて行うのが介護だと思うんです」

Kさんのように介護がうまくいかず悩む人は孤立し情報を得ることができない状態にあることが多い。そのことで不安が募り、気持ちを支えることができなくなるのではないかとMさんは分析します。

「そうした介護の不安は誰かに話を聞いてもらうことで解消できることもあります。探せばそういう対象も意外とあるんですよ。私たちケアマネがそうですし、介護体験を持つ人が身近にいれば、教えを乞えばいい。また、要介護者が認知症の場合は“認知症の人と家族の会(家族の会)”などの相談窓口もあります」

家族の会は公益社団法人の全国組織で、電話相談(フリーダイヤル0120‐294‐456 10時~15時・都道府県単位の相談もある)に応じてくれますし、介護家族が集まって体験を語り合うつどいもあります。

介護に向いた人はいないですが、介護に気持ちを向かわせる方法はあるのです。