自らの老後を考えるとき、介護は避けて通れない問題だ。もし介護施設を“終の棲家”と考えるなら、その費用を含め、老後資金をどれだけ準備すべきなのか。
必要な老後資金は、自分がどんな生活をしたいか、どこでどんな介護を受けたいかで大きく違う。ここでは平均値を使って、65歳時点で準備する資金の目安を出してみよう。
まずは、介護費用が特にかからない場合で計算する。総務省家計調査によると、高齢無職夫婦の毎月の家計支出は年金+7万円(2017年)。90歳まで生きると想定して、65歳から25年間で必要な生活資金は(7万円×12カ月×25年)=2100万円とする。このほか、住宅リフォームなど臨時費用を1000万円と見積もれば、老後資金の目安はざっくり3100万円だ。
介護施設に入居するなら、これに上乗せ費用が生じる。
介護施設の費用は、(1)入居一時金、(2)月額利用料、(3)介護・医療その他の費用、の3つに分けるとわかりやすい。(1)は入居時に払う利用権などで、0~1億円超と幅広い。(2)は室料、食費などの基本生活費で5万~35万円が一般的。(3)はおもに介護にかかる費用で、状況により大きく変わる。
(2)の月額利用料は、前掲の調査を目安に年金+7万円以内で選ぶのが前提だ。これなら、老後資金に上乗せする費用は(1)+(3)と考えればいい。
費用が安いのは公的施設で、“終の棲家”となるのはおもに「特別養護老人ホーム(特養)」。入居一時金がかからず、月額利用料も安めだ。だが、入居には「要介護3」以上という条件があるうえ、人気が高くてなかなか入れない。同じ公的施設の「介護老人保健施設(老健)」は入居期間3カ月以内が原則で、老健を転々としながら特養の空きを待つ例も多い。