バイト中、副店長と殴り合いの喧嘩する事態に
それからは店内のオペレーションで食い違うことが増えてきたという。
「団体客を案内しなければいけない席に自分の判断で勝手に他の客を移動させるなど、とにかく判断ミスが多い。彼が起こしたトラブルのクレームは私が処理していました」
だが、一連の問題行動を注意するたび、副店長は伊藤さんに反論してきた。伊藤さんは店長に直談判し、彼を異動させるかクビにしてほしいと懇願したそうだ。この構造、前出の太田さんとは真逆のパターンだ。しかし、店長は社員である副店長を擁護する。結果、事態は最悪の展開を迎えた――。
「バイト中、副店長と殴り合いの喧嘩になってしまったことがあって。店長が止めに入りましたが、彼はその場で『もう帰ります』と言って立ち去ってしまった。職場放棄ですよ(笑)。副店長は『伊藤がいる限り俺はもう出勤しません』と店長にダダをこねてきたそうです。この騒動の翌日以降、店長からはしばらくはバイトに入らないように指示されました」
2週間の“謹慎”のあとも、喧嘩は続いた。ロッカールームで2人きりになると副店長は伊藤さんに何度もつっかかってきたのだ。
「彼は仕事ができないにもかかわらず、謹慎したのは私のほう。副店長の意見を優先したことを含め、正社員はいかに優遇されているかを思い知りました。現場を回しているのはこっちなのに、トラブルになると雇っている会社はこちらを守ってくれない」
ここで、当然の疑問が。太田さんのケースのように、そこまで仕事ができたのなら社員に登用したいという誘いもあったのでは?
伊藤さんも「何度も正社員登用を勧められましたが、すべて断りました。社員になれば業務量は増えるし、簡単に休みも取れなくなる」と説明する。有名私立大学卒業という学歴もあり「働くならばホワイトカラーの職場で働きたい」と思ったという。
その後、店は閉店。それと同時に伊藤さんは飲食業界とはまったく異なる広告業界に就職した。以来副店長とは会っていない。