「アルバイトリーダーの権限が大きすぎるのが最大の問題」
ベテランアルバイトと若手社員のトラブルは「以前より増えている」と解説するのは、これまでに数百社の人事や労務にまつわるトラブルに応じてきた特定社会保険労務士の稲好智子氏だ。
「アルバイトリーダーの権限が大きすぎるのが最大の問題です。特に、飲食業や接客業の現場ではアルバイトの業務範囲をきれいに線引きするのが難しい現状があります。トラブルが起きた場合、解決策は物理的に両者を引き離す人事異動しかありません。しかし、2つのケースのように上司に相談しても取り合ってくれないこともあります。あまりにも辛辣な発言があった場合は、録音するなどして記録を取らない限り、上は動いてくれないでしょう」
この問題は根深い。同じ大卒でも年代によって就職のしやすさが異なっているため、就職氷河期世代のバイトリーダーは苦労せずに採用された正社員を妬んでいる、そんなケースもあるのだという。
さらに両者の問題をこじらせるのが、2018年4月から本格的に始まる、“無期転換ルール”だ。「2013年よりアルバイトや正社員など、雇用形態を問わず同じ職場に5年以上勤務した場合、本人が希望すれば、会社は雇用し続けなければならないと法律が変わりました。極端な話、週1日勤務のスーパーのレジ打ちバイトでも、5年以上働いていた場合は5年1カ月目以降も会社は無期雇用しなくてはいけません」。
なぜ法律改正が行われたのか。
「労働者を守るためです。これまで、有期労働契約とはいいながらも、実態としては契約が何度も更新され長期にわたって雇用が継続されているケースが多く見られました。その場合であっても、会社側はある日突然被雇用者にクビを通告できてしまっていた。結果、訴訟トラブルになっても、被雇用者の多くは何もできずに泣き寝入りしてしまっているという実態があったのです。そのような問題を防ぐためや、雇われている側の不安を解消するために設けられたのがこのルールです」
平たくいえば、長く雇用された労働者を企業は簡単にクビにしてはいけないというルール改正だ。だがこのルール、早速問題を生み出していた。「ちょうど18年度末をもって通算契約期間5年となるアルバイトが急に雇い止めを通告されるというケースが増えています。無期転換権が行使される前に有期雇用者を全員雇い止めするという方針を出した会社もありました」と稲好氏。