忙しいに副店長は “つめしぼ”を作っていた
太田さんとは真逆の立場からも言い分はある。現場を仕切るバイトリーダーとして長年飲食店で勤務していた男性は「新人として現場に入ってきた正社員とは衝突せざるをえない理由がある」と振り返る。
新宿駅前にある中堅規模のチェーン居酒屋で11年間アルバイトをしていた伊藤大輔さん(仮名・33歳)。平均して週に6日勤務した彼は「仕事ができない社員」の迷惑を被り続けていた1人だ。
「主な業務内容は調理以外の接客、会計、清掃など。ホールはすべて私がバイトリーダーとして仕切っていました。250人入る大規模店でしたが、2年で仕事は一通り覚えられます。しかし、私の数カ月後に入った正社員が本当に使えなくて……」
伊藤さんの職場は店長と副店長が正社員である以外は全員がアルバイト。伊藤さんは10人のアルバイトを束ねる立場で店長と副店長の次のポジションだったが、実質的には店長と副店長の間のポジションだった。
「最初の2年は互いに仕事を覚えたてということで副店長との間に問題は起きませんでした。しかし、次第に彼が使えないということがわかり、他のアルバイトにも迷惑をかけていたため、私が彼を注意せざるをえないことが増えてきました」
客席の多い居酒屋はとにかく席の回転率をあげなければならない。2時間で食事と飲み物のオーダーを終え、次の客を案内する必要があった。
だがこの副店長、バイトリーダーの伊藤さんから見ると「使えない」。
「ホールが大忙しのときに副店長はキッチンで“つめしぼ”(冷たいおしぼり)を作っていました。仕事の優先順位が間違っていると感じたので『忙しいのに何をしているのだ』と注意したのが最初でした」