破産者を検索できる有料サービスも登場した

次に、自己破産が会社に知られた場合、解雇されることがあるか。結論からいうと、可能性は低いと思います。なぜなら、会社が解雇するためには、就業規則に懲戒解雇の事由が定められて、かつ、これらに該当する事実があり、さらに懲戒解雇を行うにあたり、その解雇に客観的合理性・社会的相当性があることが必要です。仮に「破産者は懲戒解雇にする」という条項が明記されていた場合にも、破産したことそれ自体が業務の遂行に支障をきたすということは通常考えにくく、それだけを理由に破産者を解雇することは少ないと考えられるからです。

では、自己破産によって左遷、降格処分等の可能性はあるか。これも、就業規則に懲戒の事由が定められていることが前提となりますが、破産が業務の遂行の妨げになることは通常考えにくく、降格の可能性は低いと思います。ただし降格や昇進については会社の裁量によるところも大きいので、例えば、銀行など金融機関においては、お金を扱う業種という都合上、「自己破産するような人間に責任ある仕事は任せられない」という理由で、人事権を行使し、会社が降格や昇進させない判断を下すことはあるかもしれません。

また、最近では破産者をデータベース化し、検索するサービスを有料で提供する会社もあるため、会社側がそのサービスを利用する可能性はあります。

▼多額の借金、出世はどうなる?
会社に知られるか?
多重債務:滞納が続くと知られる可能性もある
自己破産:可能性はほとんどない(公務員の場合には上司に知られる危険性が高い)
会社に知られたら?
昇進に影響する?:ありえる(特に金融機関)
降格させられる?:業務への適格性を疑わせると判断されればありえる
解雇される?:職務に従事できない一部の職種を除き、可能性は低い
大本康志
弁護士
大本総合法律事務所代表。専門は相続、交通事故、会社法、著作権法。2015年には弁護士に無料でチャット相談をし、自分にあう弁護士を見つけられるアプリ「弁護士トーク」を開発。
(構成=東 雄介 写真=PIXTA)
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