【岩井】そう思います。映画界では粛々と映画を撮っている人のほうが「頑張っている」と見られます。でも私は業界の「はみ出し者」。海外には出るし、変わったことをやりはじめる「変人」と思われています。そんななか、止まらない自分の想像力をしっかりと受け止めてくださる高岡さんと出会ったことがはまりました。

【高岡】光栄です。お互いに、そういった「イノベーションパートナー」を求めていたのかもしれませんね。

ショートフィルムの前日譚となるアニメーション映画『花とアリス殺人事件』

「挑戦したい」と思わなくなったら終わり

【岩井】そうですね。だから共鳴するものがあると思うんです。私も常に新しいことをやっていたい。同じところにしがみついているより、新しい刺激がほしい。誰もが若いころには、上を向いて背伸びをしたり、ジャンプしたりした経験があると思います。その感覚が忘れられないというか、ずっとそうありたいと思っているのです。ここまで来れば大丈夫とは思いたくない。まだ何かに挑戦していたい。夢を見ていたい。そんな思いがあるからだと思うんですね。

【高岡】そう思えなくなったら引退ですよね。私も新しいことをやろうと思わなくなったら社長ではいられません。でもおそらく、世の中の多くの経営者はそう思っていないような気がしますね。

【岩井】グローバルという言葉は、さまざまなとらえ方があると思います。私は「まだ会ったことがない人がこの地球上にいる」という感覚です。だから会いたい。会って自分の作品を見てもらいたい。それが私にとってのグローバルです。その意味では、ローカルの部分も大事にすべきだと思っています。

グローバルに出れば出るほど、自分のドメスティックがないと戦えないことを痛切に意識するようになってきたからです。ただ、問題はあまりにもドメスティックを意識しすぎて、日本の常識だけに凝り固まることです。日本人はさまざまな国の常識を見ていないことが問題だと思います。