低迷対策で勉強量を増やしたのが逆効果だった

彼女は、社会であれば「栃木県にある世界遺産は何ですか」といった一問一答の問題、算数であれば「食塩水どうしを混ぜて濃度を求める」といった定番問題にはめっぽう強いのですが、計算ミスや問題の読み間違いをしても気づかずに先に進んでしまう傾向がありました。宿題でも何でもぱっぱっと処理することに慣れすぎていたのです。性格的に少しせっかちなところもありました。

小6の夏から秋にかけ、模試の結果がじわじわ下がっていきます。父親がびっしり設定した毎日の勉強スケジュールをしっかりこなしたうえで、さらに勉強量を増やしていましたが、ミスが減ることなく、得点は伸びません。自信を失い、生気が感じられなくなっていました。

▼負のスパイラルから抜けるために緊急面談

このタイプは、問題の解決に「量」で対応するので、方向性を間違えるとより悪い方向に行くことが多いのです。負のスパイラルから抜け出すにはどうすればいいのか。残された数カ月で有効な手だてを講じるため、ご両親と緊急面談を行うことにしました。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/imtmphoto)

頑張っているのに結果が出ない。そういった状態のときには、量をぐっと減らしてじっくり解く方向に大幅な軌道修正をはかるべきです。そして気持ちをリセットするために、「勉強しない時間」を意識的に設けることが重要です。

かつて神奈川県の難関校・聖光学院に合格した男の子も同じように悩み、悩みを量で解決しようとして精神的に負のスパイラルに陥っていました。私が「少しは勉強を休んだら?」と声がけしても、まじめな「コツコツタイプ」だからこそ、勉強を休むことができません。だから私は母親と相談して、強制的に半日間、水族館に連れて行ってもらいました。

追い立てられるように勉強していた彼にとって、半日の休養は気持ちを立て直すだけではなく、「不安ばかり募らせてもしょうがない」と割り切るきっかけになったのだと思います。勉強量も一度減らしたのちに徐々に戻し、結果として合格を勝ち取ることができました。