拉致被害者調査の報告書を、日本政府として受け取れるか

18年5月下旬、首相官邸と外務省の幹部は都内で今後の対北交渉について話し合った。主要な議題は、北朝鮮とのストックホルム合意に基づく拉致被害者調査の報告書を日本政府として受け取るか否か、である。

「北朝鮮側の報告書をまずは受け取り、その真偽を日本として丁寧に調べ上げて追及すればいい」「いや、報告書を受け取れば、それが既成事実になる」「そもそも金正日総書記時代に『8人死亡、4人未入国』という公式見解を出しているのに、息子の金正恩委員長が変更できるのか」

これまで何度も繰り返してきた議論だが、この日も結論には至らなかった。

「拉致問題の安倍」として宰相までの階段を上っていった安倍首相に対しては、拉致被害者家族らから「今回のタイミングを拉致問題解決に結び付けてほしい」との期待が募る。ただ、政府内には、早期の首脳会談開催に前のめりになれば足元を見られ、最良の結果に結びつかないのではないかとの不安もある。

最近、菅義偉官房長官は「拉致がなあ……」とぼやくことも多い。ある政府高官は現状に苛立ち、こう漏らした。「リスクをとって首脳会談に臨むかだが、総理には無理だよ」。

(写真=時事通信フォト)
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