三井物産・伊藤忠商事は圏外へ

一方、2年前にはトップ15位圏内に3社入っていた総合商社ですが、20年卒学生では第8位に三菱商事を残すだけとなりました。三菱商事も、2年前の4位から4つランクを落としています。三井物産と伊藤忠商事は1年前(19卒)から圏外となっています。数年前までは早期に内定を出す外資系投資銀行やコンサルティングファームを蹴って、総合商社にいく東大生・京大生を数多く見かけましたので、隔世の感があります。

そもそも2010年代前半ではサブプライムローン危機の余韻が残っており、外資系投資銀行の採用パワーも危機前に比べて、だいぶ冷え込んでいました。投資銀行についてネガティブなニュースも多い中、「投資事業をやるなら総合商社も面白いのではないか」と気づくようになり、金融機関を目指す学生が続々と総合商社志望に切り替えていきました。

もう1点、総合商社に有利に働いていたのが、選考の長期化です。長期化により、外資系企業から内々定を獲得した学生に対し、ある意味「後出しジャンケン」的にオファーをすることができます。当時、多くの日系企業は選考開始時期を遵守したため、外資内定者を後から囲い込んで、自社アピールをするのも容易でした。

ところが昨今の株価の変調はありながらも、米国景気が堅調に推移し、投資銀行業界が改めて活況を呈していること。さらに、ほかの日系大企業も選考を前倒しにすすめ、紳士協定が形骸化していることなどから、相対的に総合商社のアドバンテージがなくなりつつあるようです。

また「総合商社で働くとはどういうことか」といった情報が拡がり、学生の業界に対する理解がより進んだ結果、選別気質が強くなったことも影響しているのでしょう。

ついに姿を消した国家公務員・広告代理店

東大・京大の文系学生は、これまで国家公務員を目指す傾向が強く、根強い人気を誇っていました。特に外資就活ドットコムにおいては、グローバルで働く環境を想定するため外務省・経産省が長らく志望上位にきており、外資系企業との併願も多く見られたのですが、20年卒では姿を消してしまっています。これはひとえに直近で起こった財務省など官庁を巡る不祥事とその一連のメディア報道の影響が強いものと考えます。

広告代理店も不祥事とその報道に強く影響を受けた業界の1つです。ちょうど1年前の2017年5月に厚生労働省が法人としての電通を、長時間労働の管理監督不備を理由に書類送検しました。長時間労働で自殺した新卒社員のニュースは衝撃的で、1年前のランキングでは競合である博報堂が12位となった一方、電通は圏外でした。そして本年は博報堂もランキングから姿を消しました。そうしたニュースの余韻がまだ残っているのではないでしょうか。

またコンサルティングファームが広告事業を展開し、高単価BtoB事業の垣根がなくなりつつあるところも、人気が落ち込みつつある要因といえるかもしれません。IBMやPwC、アクセンチュアは「デジタルサービス」といった名称でグローバルに広告事業を展開し、ブランドエージェンシーの買収も進めています。

電通もコンサルティング事業を強化しつつありますが、まだ旧来の代理店イメージを払拭できていません。今後この高単価BtoB事業のマーケットがどう変化していくのか。東大生・京大生が敏感に反応するところだと思います。