かつての“夕日ビール”が業界トップに光り輝く理由

――中間管理職には、部下の力を引き出すためにどのような行動を求めますか。

部長クラスのマネジメント層には、部下の評価面接をする際、「客観的な評価」よりも「納得感ある評価」をしなさいと言っています。「君はここがよかった。その理由はこういう事実に基づいている。ただ、ここはなかなか伸びなかった。それはこういう事実に基づいて伸びなかった」と。そう説明すれば納得感があります。客観的に一般論としてこういうふうにするんだと言っていては、説得力も納得感も生まれません。社員一人一人、努力の仕方は違うからです。

私が課長時代に実践していたのは、「評価手帳」と言って、縦軸に部下の名前を書き、横軸に月を書き、毎月、それぞれの部下についてよかったこと悪かったことを1つずつ書き留めていくことでした。その手帳を年末に見て、19年に向けたアドバイスを部下にしてあげる。それで十分だと思います。

その際には、社員個々人の個性を考慮することも大事です。評価は公平性や客観性からつい、一律なものとなりがちですが、本来は個性と個性のぶつかり合いによる化学反応によってこそ、新しい考え方や新しいものが生まれるのです。管理職には、それらの違う考え方をお互いに披瀝させ、融合させる能力が必要になります。

当社はかつて“夕日ビール”、と言われた苦しい時代も経験しており、我々が今日あるのは、そういう苦しい時代に支えてくれたお客様やお得意先、あるいは諸先輩方のおかげです。この感謝の気持ちをベースにして新しいことに挑戦する。そういう姿があって初めて、お得意先にも株主にもお取引先にも伝わるものがあると確信しています。挑戦にはリスクも伴いますが、そのリスクを最小化してチャンスをものにしていく、そういう力が求められています。

▼QUESTION
1 生年月日、出生地
1951年11月8日、長野県
2 出身大学学部
青山学院大学法学部
3 好きな言葉
強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない
4 最近読んだ本
『しがらみ経営』(木村雄治、徳岡 晃一郎)
5 尊敬する人
家族(妻と2人の子供)
6 私の健康法
“隙間時間トレーニング”(腹筋、腕立て伏せなど)
小路明善(こうじ・あきよし)
アサヒグループHD代表取締役社長 兼 CEO
1975年、朝日麦酒(現・アサヒビール)入社。東京支社特約店営業部長を経て、2001年執行役員、03年アサヒ飲料常務、07年アサヒビール常務、11年アサヒグループホールディングス取締役兼アサヒビール社長、16年アサヒグループホールディングス代表取締役社長兼COO、2018年3月より現職。
(聞き手・構成=河野圭祐 撮影=相澤 正)
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