あなたは予算書・決算書を正しく理解できているだろうか。「プレジデント」(2018年3月19日号)の特集「会社の数字、お金のカラクリ」では、そのポイントを8つのパートにわけて解説した。第2回は「いい赤字、悪い黒字」について――。
検査費、人件費をケチれば暗転の恐れ
利益は出せばいいというわけではなく、「いい赤字」もあれば「悪い黒字」もある。その違いは、将来の富につながる「善玉コスト」の使い方にある。
善玉コストをかけた結果の一時的な赤字は「いい赤字」だ。先行投資のコストは善玉コストの典型だ。例えば、2000年頃の米アマゾンは赤字続きで株価も暴落したが、それは物流設備に対する先行投資が原因の赤字であり、それが現在の競争優位性の源泉になっている。
また、過去の失敗をリセットするコストも善玉コストと言える。日産自動車は1999年度に多額のリストラ関連費用を引当金として計上したため巨額の最終赤字に陥ったが、そこで膿を出し切ったことが、その後のV字回復につながったのは有名な話だ。
さらに15年度に資源関連の減損処理により初の連結赤字になった三菱商事や三井物産も、それがその後の業績回復の布石となっている。
一方、善玉コストを削減しての黒字は「悪い黒字」だ。神戸製鋼所など複数社で相次いだ品質データ偽装は、コストの制約上、検査など必要な時間をかけられなかったことに一因がある。製造業の生命線である品質を犠牲にした黒字は悪い黒字といえる。またよくある人件費削減による黒字も「悪い黒字」の可能性がある。経費削減も度がすぎれば、モチベーション低下や優秀な人材の流出を招き、肝心の競争力を失うという本末転倒な結果になりかねないからだ。