管理監督者に当てはまるかどうかは、課長や部長などの役職名ではなく、その社員の職務内容、責任と権限、勤務態様、待遇を踏まえて実態により判断されなければならない。

具体的には、以下3つの要件に当てはまらない社員は、社内で管理職と言われる役職についていても残業手当や休日出勤手当を支払わなければならないのだ。

(1)経営者と一体的な立場で仕事をしている
(2)出社、退社や勤務時間について厳格な制限を受けていない
(3)その地位にふさわしい待遇がなされている

もしあなたが会社で「管理職」として働いているとして、これらは守られているだろうか。

まずは「名ばかり管理職」問題の解決を

ここで多くの会社における課長職が管理監督者と言えないのは、おおよそ(2)の要件を満たしていないからだ。出退勤時間が厳密に定められ、遅刻や早退、欠勤などにより賃金を控除されるようではアウト、仮に勤怠管理はされていなくても、実質的に店舗の営業時間や職場の就業時間に拘束されていたら、まずはこの要件を満たさない。実際、出社、退社時間を自由に決められる課長職がどれほどいるだろうか。部長職でも難しいかもしれない。

現在、労働基準監督署に寄せられる相談件数のトップは「パワハラ」に関することだそうだが、労使双方がパワハラに関する理解を深め、その対応が成熟してくれば、次にスポットが当たるのは、この「名ばかり管理職」問題だろう、とある労基署職員が言っていた。

それほど、管理職と言われながら、実態としては労基法上の管理監督職に当てはまらず、本来であれば残業手当や休日出勤手当を支払わなければならない社員が多いのだ。

だが、一部の企業が法律的にはグレーもしくはブラックな役職を管理職と呼び、社員を当該役職に任命するのは、やはり残業手当や休日出勤手当を支払いたくないからと言わざるをえない。

話を裁量労働制に戻そう。

一部の企業がグレーゾーンで運用している「名ばかり管理職」。これと同じ理由で、企業が裁量労働制を採用しようとするのであれば、当該制度の導入は失敗する。そもそも裁量労働制において、会社から出勤時間を指示するのは違法行為であり、指示があって以降、裁量労働制は無効となるからだ。