飲食店が夕方の時間帯にアルコール飲料を割安で提供する「ハッピーアワー」。ファミリーレストランのほか、最近はおしゃれなレストランなどでも提供する店が増えてきた。女性の消費動向をウォッチしている山本貴代氏は「ハッピーアワーを楽しむ主婦層が増えている」という。主婦たちがランチよりハッピーアワータイムを好む理由とは――。
世田谷区の某店に集結したバブル世代の女性を中心とした6人の主婦。飲んだら注がれるシュワシュワ。

夕方限定 980円で“シュワシュワ”飲み放題に群がる主婦

仲良しライングループのママ友からお誘いのメッセージがきた。

「ねえねえ、今度“ハッピーアワー”に行かない?」
「ん? ハッピーアワー?」
「そうそう、15時半から18時半まで、980円でシュワシュワが飲み放題のお店があるの」
「了解」「了解!!」「了解~」

「ハッピーアワー」とは、飲食店がビールやワインなどアルコールの割引販売を行うサービスタイムのこと。店が比較的すいている夕方の時間帯に設定されることが多い。

午後3時のティータイムではなく、3時の泡タイムだからだろうか。急なお誘いにもかかわらず、東急田園都市線「駒沢大学駅」近くの某店に、40~50代を中心とした女性6人ほどが集まった。席に着くや否や「ハッピーアワーお願いします」。そして、カンパーイ。「空けば注がれる」の無限システムで、いったい何杯飲んだかわからない。ポップコーンはいくら食べてもフリーだったが、おつまみも300円台と安かったので、いくつか頼んでも、ひとり当たりの支払いは1500円程度。

▼ランチにはない「夕方の宴」ならではの醍醐味

話題は、家族、夫婦、子供、健康(更年期)、介護、老後、女の生き方の話と多岐に渡り、また、シュワシュワが多めに入る分、ランチタイムより仲間へのツッコミがディープなレベルになる傾向があった。腹を割った感があり、同じ世代を生き、似たような悩みを抱える者だけが結べる絆のようなものが深まった印象がある。基本的にお酒なしのランチにはない醍醐味が「夕方の宴」にはあるのかもしれない。

たっぷり飲んでおしゃべりして、18時半にはお開きとなったが、みんなかなりいい気分になった。というかできあがっていた。1000円台でちょっとしたベロベロ状態。まさに「せんべろ」だ。ほんのり赤い顔の私たちと入れ違いに店に入っていったビジネスマンが「この集団はなんだ?」という顔をしたが、そんなこと知ったことではない。

そもそも、そんな怪訝な顔をされる覚えはないのだ。朝早く起きてからの家事はもちろんのこと、夕飯の下ごしらえまでを済ませてからのハッピーなシュワシュワタイムだ。楽しいのなんの。味をしめた私はこの後、別のママ友を誘い週1回ペースでいろんなお店のハッピーアワーに出かけることになった。