対立の筆頭は「世代間ギャップ」
女たちが対立している。働き方の違いや子どもの有無など、きっかけは無数。「女同士で足を引っ張り合わずに、仲良くすればいいのに……」と、感じる男性は少なくないのではなかろうか。
男女差や世代論に詳しいマーケターの牛窪恵さんは、「私が調査を通じて見聞きしてきた中でも、女性同士の価値観の対立や確執は数多く存在します」と語る。そして、それは生き方、働き方や人材の多様性が広がる現代において、「標準」とされるものがなくなっていることが原因だと続ける。
「標準」というひな型が失われることで顕在化した対立の筆頭は「世代間ギャップ」だ。一方の主役となるのが40代後半から50代半ばの男女雇用機会均等法第一世代(以下、均等法世代)で、結婚や出産によって離職せずに働き続けた女性が管理職世代に突入したことにより、下の世代との間に温度差が生まれている。
「『24時間戦えますか』と、仕事優先で生き残ってきた均等法世代には、プライベートを犠牲にしてきたという思いが強い。ところが日本の右肩上がりの時代を知らず、終身雇用も崩壊した後に就職した20~30代からすれば、プライベートを犠牲にしてまで仕事するのは美学でも何でもなくて、単なる時代遅れに見えるんです」
普段はお互いに自制しているものの、ふとしたときに世代間対立は際立つ。その代表的なものは、ワークライフバランスの感覚が問われる場面だ。特に女性の場合は、子どもの発熱時に早退するか、仕事を休むか、そしてその際に申し訳なさそうにするか、それとも当然の権利として堂々としているかなど、お互いの感覚差、キャリア観の違いが浮き彫りになりやすい。
また、均等法世代と団塊ジュニア世代のギャップも深刻だ。就職氷河期により、派遣など非正規での就業を余儀なくされた人の多い40代半ば前後の団塊ジュニア世代には、正規社員と遜色のない仕事をしているのに評価が低いといった制度への不満や、世代的に損をしてきたとの思いから、均等法世代の女性や正社員キャリア女性への複雑な感情を抱える人も少なくない。
「責任ある仕事を任されない中で、開き直ってアフターファイブを自分磨きに充てるなどしてすごしてきた人たちです。ときにキャリア女性に嫉妬する一方で、『ああはなりたくない、そこまで猛烈に働きたいわけじゃない』という気持ちもある。その思いが透けて見えるからこそ、均等法世代の正社員は、団塊ジュニア世代の非正規社員がお稽古だ、異業種交流会だ、婚活だといそいそと退社していく姿を見て、『またなの!?』『中途半端に働くなら、辞めてくれる?』ぐらいの厳しい視線を向けてしまうんです」