勝部:いや、でも、注目したいなと思ったのは、ブームの起点に共創があることです。「人をダメにするソファ」というフレーズは、生活の文脈をふまえたうえで、あくまで個人の目線から商品の価値を新たにいいあてたものですよね。あるいは、これまでも何度か出てきた「スタンドファイルボックスをフライパン立てとしてつかう」というお話もそうでしたが、いずれも「買う人」が新しく創造した価値の一種です。

商品の先に文化がつくられていく可能性がある

川名:たしかに、企業として提案したものを超えていますね。

勝部:ええ。そういう意味では、新しい提案といってもいいと思うのですが、つまりは「買う人」と商品との共創によって生活のなかから生まれた提案が、大勢の人たちのライフスタイルを変える可能性もあるということです。誤解をおそれずにいうなら、文化をつくる可能性があるといってもいいかもしれません。

川名:広い意味では、そういえるかもしれませんね。無印良品の創業を提唱した田中一光さんは、文化とは思想やライフスタイルのことだといっています。いまは思想もライフスタイルも、本当に人それぞれだから、厳密にいえば、文化とは「思想やライフスタイルの集合体」といったほうがいいのかもしれませんが、だとすれば、「買う人」たちが、生活に根ざした価値を実現していけば、たしかに文化をつくることにもつながるかもしれません。

勝部:だからこそ、企業主導で価値を創造した時代のように直接文化をつくるわけではないにせよ、企業はやっぱり、自分たちの商品の先に文化がつくられていく可能性があることを、もっと意識したほうがいいと思うんですよ。

勝部健太郎(かつべ・けんたろう)
ユニット・ワン 代表
1974年、東京都出身。慶應義塾大学経済学部卒。金融、クルマ、小売の各業界でのビジネス構築やマーケティングの実務を経て、2010年に株式会社ユニット・ワンを設立。無印良品のスマートフォンアプリ「MUJIpassport」の企画、制作、総合ディレクションを手がけて注目を集める。2016年より家電ベンチャーとして知られるバルミューダ株式会社の取締役を兼務。「BALMUDA The Toaster」などの商品・コミュニケーションおよびビジネス開発にたずさわる。国内外の広告賞受賞、講演多数。各種アワードの審査員としても活躍している。
川名常海(かわな・つねみ)
良品計画 WEB事業部 部長
1992年、株式会社良品計画入社。宣伝販促業務を担当したのち、2004年よりWEB事業部に所属。ECサイト「無印良品ネットストア」、顧客との共創を目的としたコミュニティサイト「くらしの良品研究所」、スマートフォンアプリ「MUJI passport」などの無印良品のデジタルマーケティング全体を統括。とくに統合的な視点からのマーケティングコミュニケーション展開に定評がある。One Show、TIAA、文化庁メディア芸術祭、モバイル広告大賞、Yahoo! JAPANインターネットクリエイティブアワード、コードアワードなど受賞多数。
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