毛髪ネタといえば……。今お昼の情報番組に出させてもらっています。たまにスタジオの空気を和ませるために、自虐ネタを挟んでいます。MCの俳優さんも薄毛の方なので、先日も彼を巻き込んだコメントでボケてみたのです。ところが、誰も突っ込んでくれないし、妙な沈黙があって(泣)。結局スベろうがウケようが、それが自分のミッションなので、やることはやったという満足感はありました。スベってもめげないハートの強さは、組織の中でも必要だと思います。

「すっぽんに噛まれたら、もっと指を突っ込め」

とにかく、たとえウケなくてもボケの積み重ねがポイントです。大事なのは質より量。ちょこちょこおかしなことを言い続けていくうちに、場がゆるんでくるでしょうし、「なんだか、意外に楽しいじゃん、たまにはみんなで飲むのもいいもんだな」と、周りが思ってくれればシメたものです。

ボケをずっと繰り返すことの自分なりの意味――それは「すっぽんに噛まれたら、もっと指を突っ込め」というポリシーです。もともとシャイで人見知り、高校時代は友達が全然いなかったぐらいの暗い性格でした。今でも漫才の舞台に上がると、お客さんの顔を見るのが怖くて仕方がない。でも、怖いからといって逃げてしまったら終わりです。自分たちのネタを披露して、ちっとも笑ってくれないお客さんがいたとしても、その人から目をそらしたら負け。逆にそのお客さんをロックオンして、彼が笑うまでしつこくボケを繰り返す。つまり、すっぽんが噛むのに疲れて口を離してくれるまで、指を突っ込み続けるというわけです。

「すっぽん理論」は、舞台以外の仕事の現場でも生かしています。ドラマで共演した女優の前田敦子さんに対しても、この理論で攻めました。彼女も僕と同様に人見知りタイプなのでしょうね。根は優しい女性ですが、ちょっと難しい性格のように見えたし、最初はよそよそしかった。だから僕は自分のことをガンガンさらけ出していったのです。たとえば「僕の今付き合っている彼女ってこういう人で、こういう性癖があって」とか(笑)。また、彼女は意外に、人との会話で適当に受け答えすることがあったので「あっちゃん、適当な性格だよね。僕は無理だわ」とか言うと、徐々に笑い顔を見せて、素の自分を出してくれるようになった。格好つけて言うと、「俺も裸になるから、君も裸になれよ」みたいな。