――では、40代、50代はどう学べばいいのでしょう?
中高年になると世界が狭くなってくるから、新しい知的な刺激を与え合うような仲間が必要ですね。これは本を買ってくるようには簡単にできません。なぜできないのか。まず、年を取ると身近なところで群れて、離れた人に関心がなくなるから。そして自分に人を惹き付ける力がない。
職場の同僚だとか昔の学校の友達じゃダメですよ。自分がエスカレーターに乗っていることを自覚するためにも、エスカレーターに乗っていない人で挫折をした経験のある人。そういう人と触れて、自分を知る。ときどき食事をしたりして、いろんな問題を話し合い、違う意見や発想に触れることから学ぶことは多いんじゃないかな。
生き方を見つけるために、禅寺に行って座禅を組む人もいるけれど、結局は、触れ合う人間によるわけです。思ったことが言えて、話し合える友達が数人いたらすばらしい。
――知識を詰め込むような学習は知的生活ではない?
現在の教育は、小学校から大学まで、とにかく記憶です。ところが記憶力では、人間はコンピュータには敵わない。勝てる分野が独創性や創造性だとすると、それを発揮するためには、頭の負担を軽くしなくてはいけない。
つまり、忘却です。ただ、忘れようと思っても、なかなか忘れられない。うまく忘れることができれば、頭の状態はよくなります。覚えたら忘れ、覚えたら忘れてと、どんどん新陳代謝をして、本当に必要なことだけ覚えているというのがよい頭で、なんでも全部覚えているというのは、よくない頭です。
――すると、年を取って記憶力が落ちても、ガッカリすることはない。
むしろ歓迎です。年を取ると忘れっぽくなるというのは、頭の新陳代謝が、若いときよりも盛んになっていると思えばいい。精神的健康を維持するには、嫌なことをいつまでもグジグジと頭の中に置かないで、綺麗サッパリ、寝ている間に忘れちゃう。これが大事なことです。
――忘れる技術があれば教えてください。
忘れるためにメモとか、ノートに書き留める。大事なことは書くと忘れちゃいますからね。覚えていたいならノートなんて取らないほうがいい。面白くて大事なことは忘れないです。だいたい、なんでも全部書き留めるのは真面目だけれど頭は悪い人になる。半分以上は忘れていいというぐらいの気持ちで聞いたほうが頭に入る。
忘れる力
・体を動かす
・本は捨てる
・メモをする
・快眠の習慣
忘れる技術を身につける
脳の新陳代謝をよくするには、忘れる力が必要。でも、意識して忘れようと思っても忘れるのは難しい。脳をリフレッシュするには日常生活では軽い運動を習慣化し、快適な睡眠環境を整えること。また、忘れたいことはメモにして書き出すと頭はスッキリする。つい溜めてしまいがちな本も、新聞を読んだら捨てるように手放す習慣をつけてみよう。