――本好きには耳が痛い話です。

昔は本が貴重品だったから、床の上に本を置くと頭が悪くなるぞと脅されました。これは本の少ないときのモラルです。よい本ももちろんありますが、基本は新聞と同じように読んだら捨てる。さっき言ったように、本が役に立つのは30代まで。そこから先は害があって益はなし。それよりボーッとして、空を眺めていたほうがずっといい。

――つまり、定年後こそ創造的なことが求められると?

知識と思考力は反比例します。知識が多い人ほど考えない。知識を自分のもののように使っていると、物マネ癖がついてしまいます。若いときは知識を蓄えることも大事ですが、知識は10年も経てば必ず古くなる。

にもかかわらず、ほとんどの人が惰性で生きているでしょう? ことに高学歴で名の通った企業や役所に勤めるほど、エスカレーター人間になってしまいますから。エスカレーターを降りる直前になってどうしようと慌てるわけです。

▼40代から勉強の概念を変える
20~30代:知識を蓄える勉強
40代~:好きなことで思考力を養う

記憶よりも独創的な思考力を養う
詰め込み型の勉強法が有効なのは30代まで。多くの知識を詰め込むことが評価されがちな日本だが、本当に大切なのは思考力。他人が考えた知識や思考を真似ることではない。40代からは自分なりに考えることを心がけよう。そのためには刺激的な友人との会話を大切にし、役に立たないことでも自分の好きなことにとことん打ち込むこと。

思考力を養って、長寿社会を生きる

昔みたいに70歳ぐらいで死ねればいいけど、80歳になっても死なないし、90歳過ぎてもまだ生きている。定年が65歳だとしても、残りの20年、30年で何をするか。それを決めるのは入試や就活よりもはるかに難しい。それが見つけられないサラリーマンの老後は哀れなものです。

長寿はいいことだと、みんな思っているけれど、すでに吉田兼好は徒然草で「命長ければ辱(はじ)多し」と書いています。長生きするということは嫌なことをたくさん味わうことでもあるのです。それは避けられないけれど、岩山をよじ登っていくように、夢中でとにかく乗り越え、先へ行く力をつける必要がある。人生を満足できるように変えるのは独創的な思考です。

――リタイア後は気ままにのんびりとが理想と思っていましたが。

悠々自適に過ごせる人なんてそうはいないでしょう。それに気楽にのんびり過ごすなんて幸福そうだけれど、単なる生物だよ。

今の中高年はぬるま湯世代だから、年金が保障されなくなるかもだとか、将来が不安になると「とりあえず金を貯めよう」と守りに入り、臆病でつまらない生き方を選択してしまう。

そもそもサラリーマンという仕事がおかしいのです。毎月の収入はある程度確保されている。でも税金をいくら払っているかは会社まかせだからよく知らない。こういう呑気な生き方というのは普通じゃないです。要するに、資本に使われている下働きですよ。会社員なんて自由もないし、たいした喜びもない。にもかかわらず、みんながそうだから、大丈夫だと思っている。