目標を決める時に、どうすればいいか。中小企業の経営コンサルティングなどを手がける武蔵野の小山昇社長は、「達成できないくらい高い目標を立てる。社長として利益目標を達成したのは29年間で1回だけ」といいます。その理由とは――。

※本稿は小山昇『絶対会社を潰さない社長の口ぐせ』(KADOKAWA)の第2章「右肩上がりの経営を行なうための10の口ぐせ」の一部を再編集したものです。

「逆算」から売上目標を決める

物事は、「逆算」したほうがうまくいきます。

大学に入るには、試験日から逆算しますよね? そうすれば、いつから、どのように勉強を始めればいいかが決められるからです。

結婚するときもはじめに結婚式の日程が決まれば、席次を決める日や、案内状を出す日が決まります。

小山昇『絶対会社を潰さない社長の口ぐせ』(KADOKAWA)

これと同じように、経営も逆算が基本です。「過去計算」ではなく、「未来計算」で考えるべきなのです。

最初に結果(来期の利益目標)を決め、結果を得るための実現手段を逆算して決めていきます。すなわち、「経常利益はいくら、そのためには経費はいくらで、売上はいくらか」を逆算していくのが経営計画です。

経営計画の数字を作成する際、多くの社長が「売上」を先に決めます。最初に来期の売上を決め、最後に経常利益の数字を出すということをしているのです。

ですが、今期の総売上の対前年比5%増、10%増と売上を設定し、それにもとづいて仕入はいくらで、粗利益はいくらで、給与は、経費は、と計算していくと、利益がなかなか出せません。

私は違います。「経常利益」を一番先に決定します。

最初に「経常利益」を決め、その後「損益計算書(P/L)」を順番にさかのぼっていけば、最後におのずと「必要な売上」が決まるからです。

経常利益の数字に、根拠はいらない

では、どのようにして「経常利益」の数字を決めたらいいのでしょうか。実はその「数字」は、適当に決めればいいのです。

数字は早く決めるのが正しいのであって、根拠や妥当性は二の次です。武蔵野の「実践経営塾」に参加する社長の中には「経常利益をいくらに設定していいかわからない。具体的な額が浮かばない」と質問してくる方がいます。そんなとき私は、「だったら、ゼロにしましょう」と答えます。

すると社長は「ゼロでは困ります。せめて2000万円は……」と慌てて数字を決めます。つまりほとんどの経営者は、細かな数字を把握していないだけで、大まかな数字は持っているはずなのです。

赤字の会社であれば、経常利益はゼロでもいい。ゼロは損益分岐点。赤字が2000万円の会社であれば、「ゼロ=2000万円の純利益」と同じことです。根拠も、正当性もなくていい。

今期の経常利益の10%増でも、50%増でも、倍増でも、「これだけの経常利益を出す」と決めればいい。社長が「いくらほしい」と決めれば、それが目標額になる。そして、そこから逆算して経営計画を考えます。

スタートする前から、数字の正しさを求める必要はありません。

とりあえず数字を決めてしまい、不都合は生じてから修正すればいいだけなのです。