「額」ではなく「率」を重要視するダメ社長

物事を「率」でとらえる社長がいます。業績が何%伸びた、成長率は何%だ、借入金利は何%だ……。ですが、会社経営を「率」で考えるのは、間違いです。売上も、仕入も、経費も、会社はすべて「額」で経営しているので、利益目標は、率ではなく「額(粗利益額)」で考えるのが正しいのです。

写真=iStock.com/BsWei

2軍から上がったばかりのプロ野球選手が、最終戦で代打を任され、たまたまヒットを放ったなら1打数1安打で、打率10割です。

一方で、イチロー選手は、打率3割5分でヒットを年間200本放った。打率10割の代打選手は、イチロー選手よりもすごいのでしょうか?

そんなことはありません。打率は低くても、安打数を稼いだイチロー選手のほうがすごいに決まっています。経営も同じで、率では自社の本当の姿は見えてきません。粗利益率が高いから会社に利益が出るのではありません。固定費を上回る「粗利益額」があるから利益が出るのです。

目標100%達成には意味がない

経営における正しさとは、「利益目標を100%達成すること」ではありません。利益目標を「低く」すれば、達成率は100%になり、反対に「高く」すれば、それだけ達成率は低くなる。当たり前です。私は29年間社長を務めていますが、利益目標を達成したのは、たったの1度だけです。社員が頑張った結果で、とてもうれしいことです。

けれど私は、手放しで喜ぶことができませんでした。目標を達成できたのは、意図的ではなかったにせよ、結果的に「立てた計画が甘かった」からであり、社員の実力を私が見誤っていたからです。

利益目標を「102」に設定して、達成率100%なら、実績(額)は「102」。利益目標を「200」に設定して、達成率60%なら、実績(額)は「120」。率だけで考えると、前者のほうが優秀に見えます。ですが、実績を上げているのは、後者です。

達成率より、実績重視です。

どれほど達成率が高くても、粗利益が経費を上回らなければ、会社は存続できません。

粗利益率、労働分配率、成長率、達成率など、会社にはさまざまな率がありますが、率はあくまでも額を確保するために活用すべきです。